柏崎刈羽原発、施設支える杭が損傷。主筋18本のうち7本が破断、11本が変形

 東京電力HDが再稼働をめざす柏崎刈羽原発(新潟県)では、ID(個人識別)カードの不正使用、施設周辺の監視カメラの故障放置など昨年からトラブルが続いている。そしてまた、新たなトラブルが出てきた。

偶然に発見された破損

ギロチン破断やひび割れ

 今回は6号機の「大物搬入建屋」の基礎杭(鉄筋)の損傷だ。同社が昨年7月9日に公表してから、原因究明を行い、ようやく今年2月24日に調査結果を発表した。

 大物搬入建屋は大規模な機器の交換工事や燃料の出し入れに利用される。特に原発の使用済み核燃料は容器を含めて100tほどになるため、施設を支えるしっかりとした基礎が求められる。

  この杭の損傷は、規制基準に対応するため、同施設の耐震強化に向けて建屋下の掘削作業を行っていた時に発見された。1本の杭の直径は1.8mと太く、長さは12m。建屋下には全部で8本の杭が打たれている。損傷はまずNO.8という杭に見つかった。建屋入り口北側の端に打たれていた杭だ。杭には縦の主筋が18本あり、うち7本が破断、11本が変形していた。3月1日に現地調査を実施した原子力規制庁職員は「(真っ二つに裂ける)ギロチン破断状態」だったと報告した。その後の調査では、隣り合うNO.6の杭には、表面のコンクリートに主筋の内側まで達する深い6本のひび割れが見つかった。さらに、他の3本の杭にもコンクリートの損傷がみられた。8本の杭のうち、損傷がなかったのはわずか3本だった。

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6号機大物搬入建屋 イメージ図

安全対策に1兆1690億円
経営悪化進む東電HD

 損傷原因として東電HDは次のように説明する。「1994年の6号機の建設時に、大型クレーンの土台部分の地盤をセメントと土を混ぜて作ったセメント改良土で補強し、撤去することなく放置した。ちょうどその改良土がNO.8とNO.6あたりにあった。改良土は周辺土壌より硬いので、07年の中越沖地震の揺れで2つの杭により強い歪みがかかり、破断・損傷に至った」
 改良土は、建設終了時に東電が「放置しても支障がない」と認めた場合以外は撤去するのがルールで、撤去しない場合には、施工業者は東電に申し入れることが必要とされている。しかし、東電HDは報告や協議に関する記録がなかったとしている。一方で、放置しても支障がないかを確認するルールを怠り、管理できていなかった。

 3月2日に原子力規制委員会の定例会合が開催され、更田豊志委員長は前日の現地調査報告を受けて「改良土の影響が原因だとするような結論は受け入れられない」とした。複数の委員からは「掘削作業で改良土(厚さ4m)はすでに剥ぎ取られている。推定原因は正しいのか」「解析結果は出ているが分析条件は出ていないので確認が必要」「改良土の下部での歪みも確認する必要がある」などの意見が出ていた。

 東電HDはこの建屋を建て替える計画で、工事に関する審査が続いている。この中で原因特定を継続することとなった。

 他の杭はどうか。じつは、中越沖地震の被災状況を点検していない杭は1800本以上あるという(新潟日報21年12月9日付)。今回は掘削作業を行ったことで発見できたが、他の点検はできそうもない。東電HDは今後の対応策として地盤改良土などの放置がないかを確認するとしているが、これでは損傷を確認することはできない。

 すでに1兆1690億円も投じて安全対策を実施しているが、まだまだ費用は増大する見込みだ。再稼働にこだわるあまり、一段と経営を悪化させているといえる。

(伴 英幸)

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(2022年4月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 428号より)

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけに、脱原発の市民運動などにかかわる。著書に『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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