「20世紀に、野菜の種の94%が失われた」という事実は衝撃的だ。
たとえば、キャベツは544品種あったものが28品種に、カリフラワーは158品種が9品種に、アーティチョークは34品種が2品種になったという。環境ドキュメンタリー映画『シード~生命の糧~』は、人類が1万2千年以上にもわたって育んできた種子を独占する多国籍企業、そして種子を守るために活動する人々の姿を伝える。 

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©Collective Eye Films

 本作は、人間と自然、植物との深い関係をテーマに映画制作をしてきたタガート・シーゲル、ジョン・ベッツの両監督による3作目。

「雑誌で野菜の種子が消失しているという記事を見て、これこそ次の映画のテーマだと思いました。撮影しながら、種を守る人たち、農家、科学者、先住民コミュニティの声が、ほとんど社会に届いていないと感じました。種の消失のスピードと範囲は驚異的で、将来への影響は明らかなのに」

 映画には、伝統的な種を守ろうと活動するさまざまな人たちが登場する。インドの自然科学者で環境活動家のヴァンダナ・シヴァは「種子が特許のある製品になった時、種子の自由はなくなる」「種の自由なしに私たちの自由はない」と地域の人々に語りかけ、在来種を保存し、必要な人たちに配布もする。

 米国の先住民たちは「種子は私たちの子孫」「種は未来の食糧」と先祖代々のトウモロコシの種を守り続ける。アリゾナ州には先住民から寄贈された種を含む約2000種の種を保存する種子バンクもある。

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©Collective Eye Films

 さらに、各国から種子が送られてくるのはノルウェーのスヴァールバルにある種子貯蔵庫だ。また、南米やアフリカなど世界100ヵ国以上を回り、種子を収集し続ける米国の植物探究者たちの姿を追う。

 なぜ、この100年余りで種子は急激に多様性を失ったのか?

 気候変動が一つの原因だが、もう一つは米国で種子の売買が活発化したことだ。企業は「農業で利益を上げる方法は保存できない種子を作ること」と、一世代のみ均一の性質が出現するハイブリッド種子(F1種子)を開発。20世紀末には、企業が特許を持つ遺伝子組み換え(GM)種子が登場。特許侵害になることから、農家は自家採種ができず、毎年種子を企業から購入し続けなければならなくなった。そうして在来種が姿を消し、モンサントやシンジェンタといった多国籍企業による種子市場の独占が進んでいく。

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©Collective Eye Films

 今、食料となる作物の種子の90%は化学薬品企業や製薬会社が所有しているという。インドでは、モンサントが地元の種子会社を買収。農家にGM種子を販売すると同時に、村人たちが持っていた在来種の種を残らず買い上げ、1シーズンでその地域の種をGM種子に取り替えることに成功した。しかし多様性のないGM作物は、干ばつが続くと収穫量はゼロだ。借金を抱える人が増え、過去20年で25万人を超える農業従事者が自殺に追い込まれたという。

 そんな現場と種を守る人々を次々と映し出すこの映画は、種子が今どういった状況にあるかを教えてくれる。 (松岡理絵)

※上記は『ビッグイシュー日本版』361号(2019年5月日発売、現在SOLD OUT)からの抜粋です。


(映画情報)
映画『シード ~生命の糧~』予告編 /ユナイテッドピープル(cinemo)


2020年10月1日 DVD発売
https://www.cinemo.info/73d1i

全国で上映会開催中。開催者も募集。
https://www.cinemo.info/73m


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https://www.bigissue.jp/2020/09/15944/








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