前回(390号)では福島県飯舘村で進行中のバイオマス発電を報告したが、今回は同村の長泥地区で進行する二つの計画を伝えたい。一つは「除染なき避難指示解除」で、一つは「除染土での食物栽培」だ。 









未除染の帰還困難区域村が 政府に指定解除要請 

飯舘村ではほぼすべての地区で避難指示が解除されたが、長泥地区だけは解除されず、帰還困難区域に指定されたままだ。長泥十字路の測定地点では、2011年3月17日14時17分に空間線量率が95.1マイクロシーベルト/時という驚異的に高い数値が検出された。現在も年間の被曝線量が20ミリシーベルトを超える。帰還困難区域については、市町村が「特定復興再生拠点区域復興再生計画」(以下、復興計画)を政府に提出し、その区域内は5年後に解除されることになっている。その間に除染が行われる。

飯舘村が18年に策定した復興計画によると、長泥地区内に居住区域と農の再生区域を設け、後者では村内で発生した除去土壌を活用して農業の再生を行おうとしている。また、居住区域外に住居を持つ地区民もいるが、そこは除染されないという不公平もある。

飯舘村は今年2月、長泥地区に新たに復興公園を作る計画を立て、誰もが自由に入れるようにと、未除染の区域があるにもかかわらず帰還困難区域の指定解除を政府に要請した。公園とその周辺を復興計画に組み入れた上で解除する方向も考えられるが、村としては、地区全域の一括解除を要請したのだ。帰還困難区域の存在が復興の妨げになると考えているのだろう。

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森林伐採で土壌流出 むしろ汚染拡大の恐れ

 これに対して、原子力規制委員会は8月26日の会合で、長泥地区の除染しないままの避難指示解除を、被曝線量の観点から妥当と認めた。しかしこれには大きな欠陥がある。第一に内部被曝が考慮されていない、公園で憩うとされている人たちはセシウムの吸い込みによる内部被曝が避けられない。第二に、人の被曝線量が環境の放射線量率の6割で計算されている。

 これは「西欧の標準体型の人が直立した状態で地表面から受ける放射線」を仮定して求めた値だという。場所によっては地表面よりも1mの高さの線量率の方が高いケースもある。なぜなら森林からの放射線の影響が強いことがあるからだ。このような条件のもとで行ったシミュレーションから、個人の被曝線量が20ミリシーベルトを下回るから妥当としたのである。子どもが公園で遊ぶことなども想定すれば、とうてい納得できない。

 今後は個人の被曝線量管理へと移行する。長泥地区に入る人間はその都度、個人線量計を借りて被曝線量を個人で管理することになる。極めて曖昧で欠陥の多い原子力規制委員会の結論を受けて、政府は今後、解除に必要な具体的な要件を検討することになる。

 その長泥地区で進行しているもう一つが、除染土の上で覆土をしないまま大根やキャベツなどさまざまな野菜の栽培を行う実証試験だ。当初に公表された復興再生計画の中では、除染土の上に50cmの覆土をし、そこで観賞用植物や飼料植物の栽培を行うことになっていた。ところが、大島堅一教授(龍谷大学)が情報開示請求で入手した資料によれば、当初から覆土をしないまま食用植物の栽培が秘密裏に検討されていたことがわかった。

 飯舘村で進んでいく復興は形ばかりの復興で、とても人間のための復興と言えるものではない。 (伴 英幸) 

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(2020年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 392号より)

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伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/







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