新型コロナウイルスの猛威が続き、11月に入って全国的に第三波が到来。解雇や休業要請など、深刻な経済被害を受け、住まいを失う人が増え続けている。にもかかわらず、生活困窮者の住宅問題を支えている住民確保給付金の支給期間は最大9か月となっており、4月に申請した人はその期間がまもなく終了してしまう。2020年11月19日、危機感を強めた団体らが参議院議員会館に集い、『コロナ禍において住宅問題はどう進行しているか』という集会を開催した。


【開催団体】
国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)
日本住宅会議・関東会議
住まいの貧困に取り組むネットワーク(住まいの貧困ネット)※
※NPO法人ビッグイシュー基金の共同代表、稲葉剛が世話人を務める。

コロナ禍の住宅問題とは

冒頭のあいさつは、国民の住まいを守る全国連絡会、代表幹事の坂庭国晴さんから。集会に先立ち「住居確保給付金の支給期間9か月の延長」をはじめとした同制度の抜本改善と拡充を求める緊急要請書が、2,500名もの電子署名とともに厚生労働省と国土交通省の担当者に手渡されたことが報告された。

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住民確保給付金とは、新型コロナウイルス感染拡大で生活が困窮している人に対して、市区町村ごとに定める額を上限に実際の家賃額を原則3か月、延長は2回までで最大9か月間、支給する制度だが、4月から申請をしていた人は、この12月で支給期間が終了してしまう。

感染拡大が続く今、住民確保給付金の必要性が益々高まっていくことが予想されるため、支給期間の延長は緊急の課題。さらに現行の制度にもさまざまな問題点があることが共有された。

まず給付金額の上限が53,700円(単身世帯の場合)となっているが、東京区部でこの家賃で住める賃貸住宅はほとんどない。家賃に見合った支給額にしていくことが必要だ。

また、支給には収入、資産、求職と3つの条件が定められており、公営住宅入居層以下まで収入が減少し、預貯金が50.4万円以下、さらに熱心に求職活動をしていることが主な要件。 さらに延長の都度、書類を出さなければならないなど手続きも煩雑で、これが支給の高いハードルになっている。

コロナ禍での住まいをめぐる課題は、住民確保給付金に関するものだけではない。

「生活困窮者の方も大変な状況が続いていると思いますが、支援を担う現場も困難を抱えています。今年6月に調査したところ、相談件数が増え、現場崩壊が起きているとのことでしたが、それが現在も続いている。私たちは今回提出した要望書と同様の内容を9月25日にも提出しており、そのときにも要望した公営住宅、セーフティネット住宅への転居の支援が、今日確認したところ17万5000戸という目標数字に対して、5万戸程度とまだまだ不十分。また低所得者の方を受け入れることで国と地方公共団体がオーナーに対して月額4万円を支払う『家賃低廉化補助制度』を実施しているのは、令和2年8月の調査によると全国で35団体、全体の2%しか実施をしていないことが判明しています」

住民確保給付金の延長については、与野党問わず要望があり、検討中であると厚生労働省担当者から回答を得ることができたが、抜本改善と拡充については引き続き課題だ。

住居確保給付金の支給期間延長を求めたネット賛同者の方のコメントを1つ引用して、坂庭さんはコメントを締めくくった。

「『心が折れそうになりながら、必死に踏ん張っている方々が大勢おられます。政府が延長の意思を示すことが、大きな希望につながります。更にこの制度を期間の定めのない恒久的な制度にしていきましょう!』ということです。実現のため、我々も力をあわせていきましょう」

まるで収容所…無料低額宿泊所の問題点

次に労働問題などを数多く取材しているジャーナリストの藤田和恵さんから、住まいの貧困に関する講演が行われた。コロナ禍の支援現場の取材のため、支援団体の活動に自らも参加している藤田さんは、コロナ禍の傾向についてこのように語る。

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「お金や仕事を失っただけでなく、住まいを失った状態でSOSを出してくる人が多いのが現状です。連絡を受けて待ち合わせ場所に行くと、リュックやショッピングバッグなどバッグひとつでやってくる人も。160cmで35キロになってしまった男性、経済的な理由から降圧剤が飲めず、上の血圧が半月くらい170のままの男性など、苦しい状況の方々にたくさん会ってきました。」

寒さが厳しくなる季節を前に、雨露が防げる住宅とは、大げさではなく命を守るために必要な場所。今の日本ではその命を守る場所をいとも簡単に失ってしまっている人がたくさんいると、藤田さんは言葉を強めた。

藤田さんと共に活動している団体では、このような生活が困窮している方に対して、ご自身の意思を尊重しつつ、生活保護を勧めている。しかし住居を有していない場合は生活保護を申請できないという見解を示す自治体が多く(※実際には申請可能であり、住所がないことを理由に拒否するのは違法)、そのときに提案されるのが、無料低額宿泊所(無低)という施設に入居することだ。無低とは社会福祉法に基づく入居施設で、無料もしくは低額で利用することができ、入居者の約9割が生活保護利用者となっている。しかしこの無低のなかには劣悪な環境の施設もあり、さらに利用料として生活保護費を搾取する「貧困ビジネス」の温床になっていることもしばしばあると藤田さんは指摘する。

「すべての無低とは言いませんが、薄いベニヤ板で仕切られただけの個室、粗末な食事、害虫が発生する不衛生な空間、コロナ禍でも三密を避けられない大人数部屋なども多くあります。さらに外出先の行き先申告や、早朝のラジオ体操、近隣公園の清掃などの行動制限も。無低に入れられるくらいなら、路上でも仕方がないという方も何人かいたほどです」

自治体によっては、生活保護を申請する際に、半ば強制的に施設に入ることを勧めるなど、まるで生活保護を受ける条件として施設入居が当たり前のような対応をしている自治体もある。結果、生活保護申請をあきらめて帰ってしまう人も多いという。

生活保護には居宅保護の原則があり、アパートなどの居宅で保護をすることが基本。にもかかわらず、施設への入居を条件とすることが1990年くらいから常態化している。そんな運用を是としている自治体の責任を問うべき、と藤田さんは指摘した。

一方で、支援者が同行した場合のみ、一時宿泊所として、安いビジネスホテルを紹介してくれる自治体もあるという。「本来は無低への入居になりますが、そちらで安い宿泊先を探してくれるならいいですよ」と丸投げされることもあるそうで、そのときは1泊1800円までの安い宿を当事者と支援者で探すという。

「先ほどお話した、血圧が170の状態が半年続いている当事者に対しても、自分で宿泊先を探すならいいですよ、と突き放され、『今夜も寝る場所がないと思うと、死にたい』ともらしていた。どうして当事者がここまで不安にさせられて、住まい探しをしなければならないのか。これを自助、共助などと言われるのは違和感があります」と藤田さん。

藤田さんは今後への提言として、まずは実態把握が必要だと話す。具体的な管理運営、不適切で脱法的な実態がないかを調べるべき、と。また東京都が年末年始に向け住まいを失った人にビジネスホテルを用意すると発表したことは、当面の措置としては有効で歓迎するとした一方で、今回限りの処置だけではなく、根本的、恒久的な解決のために家賃補助制度、低家賃で入れる公的住宅を整える必要があると話した。

「住まいを失ったときくらいは、国や自治体が助けるべきというのがおかしいのか、無低か路上かの二択しかないのがおかしいか、この機に真剣に考えるべきタイミングだと思う」と藤田さんは講演を締めくくった。

住まいという基本的人権を外国籍の人々にも

次に登壇したのは、上智大学教授で、移住者と連帯する全国ネットワーク運営委員、反貧困ネットワークの世話人を務める稲葉奈々子さん。「外国籍の人々の居住問題」に関する特別発言が行われた。

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冒頭、反貧困ネットワークが中心となって作られた、新型コロナ災害緊急アクションの「緊急ささえあい基金」に1億円近く、そして移住者と連帯する全国ネットワークでも5,000万円の支援金が集まったとの報告が。

「こんなに金額が集まったのは、市民レベルでこの状況をまずいと感じているから。しかしこのリアリティが政府には伝わっていないのではないでしょうか。私はとくに外国人の方の権利を保障してほしいと政府と交渉する機会がありますが、『制度としては保障されている』という回答です」

制度は保障されていると本当に言えるのだろうか。稲葉さんからは外国籍の人々を取り巻く困難が共有された。

とりわけ深刻なのが、在留資格がないままに、三密を避けるために入管収容所から一時解放された仮放免の方々。その方達は就労が許可されていないので、生活の支援を稲葉さんの団体でもしているが、家賃未払いで立ち退きをせまられる状況が増えているという。また在留資格があったとしても、外国籍の人々にとってセーフティネットはうまく機能していないことを稲葉さんは指摘する。

「住宅セーフティネット法では、公的住宅の入居対象者には外国籍の方も含まれていますし、公営住宅法が定める低所得者にも100%あてはまる方が、入居の段階で国交省が示していない条件を突然出してきて、入居を断られるというパターンがよくあります。こういう方たちが民間の賃貸住宅を追い出されないように、緊急アクションで支えていますが、これが限界に近くなってきています。このままでは外国籍の方が家族でホームレスになってしまう例が、数か月以内に出てくるでしょう。コロナが引き起こした生活困窮は、国籍や在留資格によって明らかに異なっているのです」

今後、どのような対策が取られていけばいいか。稲葉さんはリーマンショックを振り返り、こう話した。

「リーマンショックのときの反貧困支援では、求職者支援や住宅手当など第二のセーフティネットが作られました。同時に第一のセーフティネットである生活保護は、運動団体の声によって、それまで受給できなかった若年の失業者にも受給できるようになったのです。コロナ禍ではこれを外国人にも広げていきたい。医療や教育と同じように住まいを基本的人権として、外国人を含むすべての人に保障される取り組みをしていきたいのです」

市民社会の論理を封じて、国家の論理に変えている流れが今できつつあり、大変な状況が続いているが、ここに集まった人を見てもらえれば分かる通り、市民社会の倫理に耳をかたむけて、制度を変えようと動いている人がたくさんいます。まだまだ日本も大丈夫だと思う、と集まった団体の連帯を確かめる温かい言葉で、稲葉さんは特別発言を締めくくった。

各界からの課題共有と提言

会の最後には、参加した各団体からリレートークが行われ、それぞれの課題、提言を共有した。

住まいの貧困に取り組むネットワークの世話人であり、ビッグイシュー基金の共同代表である稲葉剛からは、10月以降、各団体が行っている路上生活者向けの炊き出しに集まっている人が増えているという報告が。

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「池袋のTENOHASIの炊き出しには、通常180人ほどのところが、270人と1.5倍に増えており、集まった人には若い世代も多い。他の地域も同様です。我々も、全国の40団体とともに『新型コロナ災害緊急アクション』に参加しており、緊急アクションには連日届くSOSのメールに対応をしています。その多くがすでに住まいを失い、路上、ネットカフェでのホームレス生活をしている方たちで、なかには所持金が数百円という方も。住民確保給付金などの拡充が行われなければ、12月以降、路頭に迷う人が増えることは必至です」

また先日、東京都が発表した、年末年始ホテル1000室の宿泊支援を歓迎しつつも、4月の二の舞にならないようにお願いしたいと、稲葉さんは話す。4月に行われた宿泊支援では都内に6か月以上いる人しか受け付けないなどの選別が起きるなど、窓口に行っても使えない人も続出したというのだ。また緊急宿泊支援も大切だが、それだけでなく安定したハウジングファースト型の支援を取り組んでいきたい、と稲葉は言う。

「2009年3月リーマンショックのとき、住まいの貧困ネットが立ち上がった。今が正念場。今こそ住まいは基本的人権であるということを実現すべく、具体的にひとつひとつ政策を進めていきたい」

**その他の情報提供・提言サマリ**

東京借地借家人組合連合会の細谷紫朗会長からは、家賃が払えなくなると、住居を損失してしまう住宅政策を変えなければならいないという提言が。セーフティネット法で、保証会社の保険で家賃を滞納した部分を70%保証することになっているが、ほとんど機能していないとのこと。また、家賃補助制度創設等を求める請願書の署名も募っていることが共有された。

家賃補助創設等を求める請願署名/東借連 (zensyakuren.jp)

東京都公営住宅協議会、小山謙一会長からは、都営住宅は親が亡くなったら家族が出ていかなればならず、高齢者の単身世帯が増えていて、孤独死と隣り合わせである状況が共有された。住宅のセーフティネットになるためには、都営住宅の制度を変えていく必要があるとの提言。

また神奈川公団住宅自治会協議会、和久晴雄理事からは、神奈川の公団の住民の実態把握の3年ごとのアンケート結果が共有され、生活困窮者が増えている実態が報告された。

東京公社住宅自治会協議会、奥脇茂事務局長からは、生活困窮が増えているなかで3か月家賃滞納したら退去する制度の見直しへの提言と、コロナ禍での減額制度が作られたが、申込みは44戸のみとの報告。高齢の世帯が多いので、コロナ禍以外でも家賃減額制度が必要との提案がなされた。

都市機構労働組合、竹内清前書記長からは住宅ローンのボーナス払いができない人が増えていると報告があり、年功序列型賃金の破綻している今、住宅ローンの期間延長、ボーナス併用払いの廃止、または縮小と、親身な返済計画をすべきとの提言があった。

東京都庁職員労働組合住宅支部、北村勝義元支部長から、感染者拡大のなか、年末にかけて倒産が増えてくることが予想されるので、2回目の持続化給付金、住宅供給政策に踏み込むべきなど対策への提言。

NPO建築ネットワークセンター、長谷川博道理事からは6月に家賃減額、公共住宅の建設を求め声明を発表していること、10月には車上生活者の実態の勉強会実施が報告された。

中小建設業制度改善協議会、星野輝夫会長からは、建設業についての共有が。仕事がなくなったり、現場でコロナが発生し、そのしわ寄せが中小企業にきているとの報告があった。

反貧困ネットワークの事務局長、瀬戸大作さんからは、コロナ禍で仕事がなく、ひっ迫した状況が各地で起こっており、さらに外国人に対して追い出しも起きているという事態の共有がされた。

**

11月末、こうした活動と各方面からの要請に応え、「支給期間の延長」の方針が決定となった。
「住居確保給付金の支給期間の延長について」(談話)


各団体の声明と連帯に心強さを感じつつも、住まいという最低限の人権が実現する社会であるよう、政府に任せきりにするのではなく、声を上げていかなければならない。

新型コロナウイルス:緊急ささえあい基金

反貧困ネットワークでは「新型コロナウイルス災害:緊急連帯基金」を発足させ、各支援団体が取り組む緊急経済支援や一時居住支援に役立ててもらうよう支援する事とします。
https://corona-kinkyu-action.com/sasaeai/

(Text:上野郁美)
サムネイル:エンリケ/photo-ac


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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。