廃炉作業中の「ふげん」の使用済み核燃料をフランスに運ぶ計画が進行している。福井県が使用済み核燃料を県外に持ち出すよう強く迫った結果だろう。
核廃棄物まで協力できない
福井県、県外搬出を要求
原発は迷惑施設であり、それを受け入れることで国策に協力してきているので、廃棄物まで協力するつもりはない、というのが当該自治体の言い分である。原発に対しては交付金が出ているが、これは迷惑料だと言うわけである。確かに1974年当時、交付金制度に関する国会での法案審議では、中曽根康弘通産大臣(当時)が「原発を導入しても電気は都会に送られるだけで地元にはメリットがないとの自治体の声があるので救済措置が必要だ」と強調していた。
「ふげん」は新型転換炉と呼ばれ、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)が日本独自の原子炉として設計し、福井県敦賀市に建設した。実用化2段階前の原型炉で電気出力16.5万kWである。1979年に本格運転を開始し、2003年に運転を終了。現在は、廃炉作業の終盤である。
使用済み核燃料は茨城県・東海村で再処理されていたが、東海再処理工場は2008年から運転を停止し、現在は新規制基準に適合できないことから廃止が決定している。未処理の使用済み核燃料が東海再処理工場と「ふげん」施設内に、合計で731体保管されている。これらをフランスに送ろうというわけだ。
なお、「ふげん」に次ぐ実証炉は青森県大間市に建設予定だったが、高コストを理由に9電力が負担を拒んだ結果、沸騰水型原発計画に衣替えして、建設途中である。
2026年までに搬出開始予定
契約金133億円は数倍に?!
“使用済み核燃料をすべて再処理してプルトニウムを利用する”という日本の原子力政策も、フランスとの契約に向かわせたと言える。東海でも六ヶ所再処理工場でも「ふげん」の使用済み核燃料を再処理できない。そこで、フランス・オラノ社と将来の再処理に向けて、まずは搬出に関する契約を締結したというわけである。公式には再処理するかどうかは未定というが、所管の文部科学省の小出し戦略に違いない。再処理に進まなければ再び持ち帰ることになるからだ。2026年までに搬出する計画で、現在は輸送容器の設計・製造を行なっている段階だという。
11月に行われた河野太郎行革担当大臣の行革レビューでも、この問題が取り上げられた。結果は「契約解消を含めた新たな検討がなされるべき」となった。しかし、文科省は見直さず、報道によれば、県外搬出という地元との約束を守る必要がある、オラノ社との契約133億円のほうが国内での貯蔵継続費用より安上がりだと河野大臣を説得した。
「ふげん」の使用済み核燃料をフランスで再処理するためには、現地の工場を処理可能なように増設もしくは改造しなければならないはずだ。そんな費用も再処理契約には含まれることになるだろう。契約金は数倍にも増えかねない。また、回収されるプルトニウムやウラン、放射性廃棄物はいずれ日本に戻ってくることになる。しかしプルトニウムの使用用途はなく、廃棄物の処分も未解決のままだ。無意味かつムダな契約と言える。
さらに「ふげん」で再処理の道が開かれれば、県外搬出が求められている「もんじゅ」の使用済み核燃料もフランスでの再処理につながりかねない。
このようなことが明らかなのだから、海外での再処理ではなく、国内での貯蔵継続の道を探るべきだ。
(伴 英幸)
(2021年1月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 398号より)
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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