コロナ禍で、公的制度にはどのような動きがあったのだろうか。

6月19日に行われたオンラインイベント<BIG ISSUE LIVE #4「コロナ禍の支援現場から見えてきたこと」>には、困窮者支援活動に最前線で取り組む小林大悟さん(「新型コロナ・住まいとくらし緊急サポートプロジェクトOSAKA」呼びかけ人、NPO法人釜ヶ崎支援機構・主任相談員)、根本真紀さん(ソーシャルワーカー)が登壇。
司会を務めるNPO法人ビッグイシュー基金大阪事務所の川上翔が話を聞いた。
(その1:大阪の現状 その2:東京の現状

公的制度の支給状況から、支援が強く求められている実情が見える

まず、厚生労働省が困窮する個人に向けて行っている支援では「緊急小口資金」及び「総合支援資金」、そして「住居確保給付金」がある。

厚生労働省|厚生労働省生活支援特設ホームページ

「住居確保給付金」は家賃相当額を自治体から家主に支給するものだが、この支給件数は2020年4月~2021年3月までの期間で、134,976件。前年度の約34倍増えた。

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また「緊急小口資金等の特例貸付」の累計支給額は、6月12日時点の速報値で、ほぼ1兆円に到達しかかっている。

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生活保護の申請件数については、2020年度、最終的に22万8千件となり、前年度から約5000件の増加。

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こうした公的制度のデータの動きについて根本さんは、「公的制度の一つ、『総合支援資金』はリーマン・ショックのあとに始まりました。ちょうどその影響があった2009年~2012年の3年間の合計で、約20万5千件の支給件数でした。件数のみの比較ですが、特例貸付は2020年3月末からの1年3ヶ月間では240万件あった」。

この10倍を超える数字は何を示すのか。

リーマン・ショックのときは製造業に影響が出たが、その失業者の受け皿となったのは飲食業とサービス業だ。コロナ禍ではそこも影響を受けてしまったという。

根本さんは、「実際に相談を受けていても幅広い業種に影響が出ていると感じる」と話す。「そして外国人の場合、ほぼ唯一利用できる公的制度は、この特例貸付です。都市圏では支給された方の中に外国人の占める割合が大きい」と指摘した。

こうした貸付は、返済が始まる時期が迫っている。返済免除となる条件も厳しい。

「東京都の単身世帯では、年収100万円以下が非課税の対象となる。貸付の返済が免除されない方が多いのでは」と根本さんは懸念する。

質疑応答

Q. 特例貸付の返済免除の条件、もっと緩くならないでしょうか。

根本さん「個人的な意見で言えば、あまりに免除の条件が厳しいため、特例貸付を利用している人も、そうでない人も含めて、今こそ皆さんの声を上げていただくことが大事なのかなと思っています」。

Q. ジェントリフィケーションの具体例を教えてください。

小林さん「わかりやすい例が行政代執行ですね。渋谷区の宮下公園の事例がありました(MIYASHITA PARK/ミヤシタパーク)。大阪では天王寺公園を改修して、おしゃれな店を建てた結果、そこで野宿していた方が寝られなくなったということがありました」。 川上「大がかりではない、ゆるやかなジェントリフィケーションも注意する必要があると思います。東京のワンルームの家賃が年々高くなるとか、これでは徐々に貧困になって住めない。このような『見えないジェントリフィケーション』というものも意識する必要があります」。

Q. 「大人食堂は初めて聞きましたが、こども食堂の現状はどうなっているのでしょうか?」

小林さん「大阪、特に西成地域の話ですが、大きくコロナの影響を受けています。感染リスクがあるということで、取りやめたところもあれば、お弁当の配布に切り替えたところも多いです。基本的にボランティアで運営するのですが、今は新規のボランティアの募集も完全に停止していて、これはほとんどのところで起きています」。

根本さん「東京も同じ状況です。『子どもの貧困』の問題から『こども食堂』ができたと思うんですが、その後、地域のつながりを取り戻すという文脈で爆発的に広がりました。つながりづくりというところで、後々どういう影響が出るのか心配しています」。

Q:まちづくりの観点から、西成区の動きは。

小林さん「日雇い労働者が暮らしていた簡易宿泊所をバックパッカー向けに改築するなど、海外資本のホテルが増えたが、観光客の減少により閉業したところもあり、インバウンド頼りのところでは西成区は苦境に立たされている。」

川上「西成・釜ヶ崎の支援団体の活動を見ていると、大きな資本が入ってくることと、困窮する当事者と伴走することの間で葛藤があり、メディアに取りあげられない地道な積み重ねややり取りがあるのではないかと感じる。、長年、困窮者支援を行ってきた団体の職員から話を聞く場が、まちづくりという観点でも、もう少し増えてほしい」

知ることからアクションは始まるー読者アンケートより

今回の動画の視聴者アンケートには、このような声が寄せられた。

「知らないうちに友人知人が生活困窮しているかもしれないという想像力は持っておく方が良いのではないかと思いますし、そのために役立つ情報を持っておくことも必要だと思っているので、支援活動をされている方のお話を聞かせていただけるのは、希望を見いだせることだと思います。」

「憤ることでは何も解決しないので、知っていくこと、現状の情報共有をしていくことで少しでも自分の行動に繋げて行けたらと思います。」

「まずは、ビッグイシュー基金ボランティア説明会に参加したいと思います。」

「抗えないような状況で貧困状態に移行してしまう人たちが多く出てしまう世の中の状況の中で今自分に何ができるか考えていきたいと思いました。」

一人でも多くの人に現状を知ってもらうこと、そして具体的なアクションを取る人が増えることを願い、今後もビッグイシューライブの配信を予定しています。

記事作成協力:Y.T

当日の動画


ビッグイシュー基金
https://bigissue.or.jp/

第6次「コロナ緊急3ヵ月通信販売」概要/長期化するコロナ禍、“家なき人”とともに生きのびたい https://www.bigissue.jp/2021/06/19544/

小林大悟さん - Twitter 
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