カナダの先住民ファースト・ネーションにまつわる悲劇が、またひとつ明らかになった*1。バンクーバーのストリートペーパー『メガフォン』のコラムにて、編集長ジュリー・アオキが綴った思いを紹介したい。
*1 参照:無名の墓751基、カナダ寄宿学校跡で発見 先住民団体が発表(BBCニュース)


※下記は、2022年9月4日のカナダ先住民居留地における刺殺事件を受けて2021/08/16に公開した記事を再掲・編集したものです。


カナダ西部ブリティッシュコロンビア州カムループスから衝撃的な知らせが届き、私はすっかり打ちのめされた。このニュースを知らない人は、「カムループス・インディアン寄宿学校」で検索し、この地域で最近明らかになった事実を知ってもらえたらと思う。

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Identification Underway of 104 Bodies in Unmarked Graves at Former Site of Brandon Manitoba Indian Residential School and Memorial. Current estimates are that there could be over 10,000 bodies in mass and or unmarked graves at former residential school site across Canada./ProPics Canada Media Ltd /i Stockphoto



これほどまでに深刻な悲劇を、この短いコラム内でかいつまんで要約してしまうことは、トラウマを抱える人たちを傷つけてしまう恐れがあるため控えたい。私がここで伝えたいのは、和解を目指すのならば、入植・開拓・移住してきた側が、国の歴史や現状について、真実を追求する必要があるということだ。

カナダ政府は当局の権限を行使し、居住地や寄宿学校の強制、女性の権利剥奪、自治制度の破壊、ありとあらゆる方法で、先住民コミュニティの伝統文化を組織的に蝕み、暴力を強いた。

入植者たちはその波に乗り、先住民の土地を取り押さえ、奪い、支配していった。そこに暮らしていた人々や文化は、徹底的に破壊された。子どもたちは家族から引き離された。女性たちは人間性を奪われ、暴力にさらされた。

手段の1つとなったのが「インディアン法」だ。カナダのほぼ全土に暮らす先住民の子どもたちへの教育責任を連邦政府に与える法律だ。先住民の文化を撲滅するという明確な目的の下、寄宿学校の運営はカトリック教会が取り仕切った。

これらの寄宿学校で起きたおぞましい残虐行為についてカナダ真実・調停委員会 (Truth and Reconciliation Commission)がまとめた報告書には、栄養失調や病気の放置といったネグレクト、心理的・身体的・性的虐待、衝撃的な死亡者数(実際の数はさらに多いと見られている)が記されている。

最後の寄宿学校は1996年に閉鎖したとされているが、だからといってカナダの歴史の一幕を過去のものとするのは間違いだ。

ブリティッシュコロンビア州の子ども家庭省によると、2019年時点で、同州で後見を受けている子ども、および若者の40パーセント以上は先住民だ。また、同州検察局の2018年度報告書では、2011〜2016年のあいだの里親制度と関連した200件の死亡例を調査したところ、先住民の子どもと若者の割合が異様に高いことを明らかにした。

こうした現実はすべて、貧困やホームレス問題と絡み合っている。私たち『メガフォン』が日々向き合ってる問題だ。メトロバンクーバー地区の「ホームレス・カウント」(路上生活者数の調査)の2019年度報告によると、バンクーバーの路上生活者に占める先住民の割合(46%)は、一般住民に占める先住民の割合(2.2%)と大きくかけ離れている。

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Vancouver,Canada - June 26,2020: View of Strathcona Park in downtown Vancouver full of tents and homeless people/Margarita-Young/iStockphoto

自分たちの“故郷”の暴力的な歴史に向き合うのは苦痛を伴う。しかし過去を知ることは、よき未来へと舵を切る力となる。

読者の皆さんには、過去の歴史や、今なお尾を引く植民地政策について、あらためて考えてほしい。ファーストネイション、メティス(白人と先住民の混血)、イヌイットの物語に耳を傾け、メディアなどを通じて、この問題について発信していただけたらと思う。

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殺害または行方不明の先住民の女性や少女への敬意を示し、バンクーバーで開催されたウィメンズ・メモリアル・マーチにて高く掲げられたドラム。 Credit: Melanie Graham-Orr

By Julia Aoki
Courtesy of Megaphone / INSP.ngo

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