ビッグイシュー基金・ビッグイシュー日本では、教育機関や各種団体などに出張して講義をさせていただくことがあります。
今回はスタディツアーなどの事業を手掛けるリディラバさんからのお声がけでご縁をいただき、大阪市の桃山学院高等学校へお伺いしました。
今回は第一部としてホームレス問題やビッグイシュー事業の解説と当事者の体験談、第二部はワークショップという特別構成です。
講座の前には、半数以上の生徒がホームレス状態の人たちに対して概ねネガティブなイメージを持っていたそう。
当日はスタッフの吉田から、「貧困」や「ホームレス」、「憲法」、「人権」、そしてビッグイシューの事業について解説。
「ホームレス」とは、“状態”を表す言葉に過ぎず、その人となりをあらわすものではないという話を生徒さんとのやり取りを交えながら話していきます。
吉富さんの「ビッグイシュー販売者になるまで」と「これから」
続いて、長崎県出身で、奈良県の生駒駅で販売をしている吉富さんが登壇。高校卒業後は自衛隊に4年ほど在籍。その後スーパーや農業など様々な仕事に就きますがチック症だったこともあり、なかなか長続きしませんでした。参考記事:体が勝手に動く/言葉が出てしまう-「トゥレット症」を知っていますか?
ある時、日雇いで働いていた建築現場も障害を理由に解雇され、路上に出てしまいました。しかしビッグイシューの販売者になってからはコツコツと販売を続け、お金を少しずつ貯め、ステップハウス(※)を経て、今では自力でアパートに入居できるまでになりました。
ビッグイシューの販売のいいところは「寂しくない」ところだと話す吉富さん。「ホームレスワールドカップ」に日本代表としての出場経験があったり「講談部」の部員として講談の練習にも励んだりなど、人とのつながりを大切にしているようです。
※ステップハウス:連携団体や、一般の家主の方から提供される空き物件を基金が借り受け、ビッグイシュー販売者をはじめとするホームレス状態の人に、低廉な利用料(15,000円~)で提供する、NPO法人ビッグイシュー基金の事業。
いまはTwitterやTikTokを使った発信にもチャレンジしており、ゆくゆくの目標の一つ動画制作ができるようになれたら…と夢を語りました。
報道されないだけで、ホームレス襲撃は起こっている
高校生からは「(ホームレスの人は)何を食べて過ごしているんですか?*1」といった生活についての素朴な質問も。「どこで寝てたんですか」「友達や仲間はいましたか?」いう質問には、「ホームレスになると、通行人に攻撃されることが多いので、暗いところで一人では過ごすことは危険でできないんです。助けが呼べるよう、常に誰かと一緒にいました」と回答。悲惨なホームレス襲撃事件が時々報道されることがありますが、目の前にいる吉富さんからの話でもリアルに“ホームレス状態でいるだけで、見知らぬ人に本当に攻撃されてしまうことがある”ということに、驚いている様子でした。
*1生活困窮者のために、「炊き出し」という活動があります。
参考:路上脱出・生活SOSガイドhttps://bigissue.or.jp/action/guide/
最後に吉富さんから高校生の皆さんへメッセージとして「料理における調味料のように、人間関係では話し方が大事。まずは相手の話をよく聞いて、よく考えて話すことが大事だと思います」「昨日よりも今日を幸せに」と話しました。
第2部は、吉富さんによる段ボールハウス作成のワークショップ。
野宿だけでなく災害時など緊急の際にも使えますよと話しながら、野宿や段ボールの選び方、組み立て方についてレクチャー。
大災害が起こると多くの人は困惑するかもしれませんが、もしかしたらホームレスの人たちはそんなときに“頼りになる先輩”になるかもしれません。
実演。自分の体のサイズに合わせて調整するのだそう。
授業後の感想「社会をアップグレードしなければ」
講義後の生徒の皆さんへのアンケートでは「今までかかわりのない別世界だと思っていたが、少しでも役に立ちたいと思った」「社会的に立場が弱い人から貧困に陥る仕組みになっている。もっと社会をアップグレードしなければならない」といった声が見られ、ホームレスの人たちへ持つ印象がよくなった、と回答した声を多くいただきました。また、担当の磯田先生からは、「生徒たちは普段は教師と親以外の大人と会うことが少なく、メジャーな仕事しか目に入りにくいなかで、このような社会に関わる仕事やそれにかかわる大人のお話が聞けて勉強になったと思います。多様性が重視されるようになってくる中、いろいろな人の人生を受け入れられるようになってほしいと思っています。そういう意味でも販売者さんの人生の話は生徒たちに新しい刺激になったと思う」といった感想をいただきました。
格差・貧困・社会的排除などについて出張講義をいたします
ビッグイシューでは、学校その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。
小学生には45分、中・高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。
https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/seminner/
参考:灘中学への出張講義「ホームレス問題の裏側にあること-自己責任論と格差社会/ビッグイシュー日本」
人の集まる場を運営されている場合はビッグイシューの「図書館購読」から始めませんか
より広くより多くの方に、『ビッグイシュー日本版』の記事内容を知っていただくために、図書館など多くの市民(学生含む)が閲覧する施設を対象として年間購読制度を設けています。学校図書館においても、全国多数の図書館でご利用いただいています。図書館年間購読制度
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ビッグイシューについて
ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。
ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。