2003年から「有限会社ビッグイシュー日本」は路上での雑誌販売の仕事をつくり、2007年からは「NPO法人ビッグイシュー基金」が、住まいや健康面などでホームレス当事者を支える活動を行っている。

当事者にとっては、それらの活動はどのような意味を持つのか。路上生活の経験がある西岡稔さんに話を聞いた。

※2021年9月11日に行われたオンラインイベントBIGISSUE LIVE「あらためて語る ホームレス問題」で西岡さんがお話ししたことを元にした記事です。第一部はこちら

介護離職から路上へ-西岡さんの半生

西岡稔さんは、10代の頃ジョッキーに憧れ、大阪から北海道に渡り牧場で働いていた。しかし脳梗塞で倒れた親の介護で離職を余儀なくされる。その後就いた仕事は阪神大震災により会社が倒産、その後もリーマンショックで派遣の仕事を失うなどの不運が続き、野宿しながら炊き出しを利用し、日雇い労働の日々となった。

2019年、西岡さんは偶然図書館で見つけた「路上脱出・生活SOS ガイド」*がきっかけとなり雑誌「ビッグイシュー」の販売を始める。

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(上記写真は2,017年の四谷図書館の様子)

*NPO法人ビッグイシュー基金の活動のひとつ。路上生活する人が生きのびて自立への道を歩めるようになるために必要な情報を一冊の冊子にまとめ、ホームレスの人たち全員に配布しようとするもの。


その後西岡さんはコツコツと販売を続け、2020年4月にNPO法人ビッグイシュー基金が運営し期間限定で住むことができる「ステップハウス」に入居。その後「おうちプロジェクト※」 (2021年7月終了)で助成を受け、新しい「自分の」住居に入居できた。


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※住まいを失った人に、NPO法人ビッグイシュー基金が事務局となり、入居のための初期費用、家具・家電の提供をして、必要があれば不動産会社を紹介する。207世帯に対して居宅支援を行った。



西岡さんが販売者となってからは2年半が経つが、その間1年半以上はコロナ禍の影響を受けている。緊急事態宣言下の現在も、売り上げが厳しい。午前は地下通路、午後は誰も人が通らないので別の販売場所に移動しているという。

今はビッグイシューの通信販売「コロナ緊急3ヶ月通信販売」購読分の売り上げから提供された販売継続協力金を家賃に充てて生活している。

コロナ禍で販売をしながら「メンタル心理カウンセラー」の資格を取得

西岡さんはジョッキーを諦めたものの、牧場で働いていたため動物と触れ合うのは得意だ。数年後にアニマルセラピーのカフェを開きたいという目標を持ち、ステップハウスやその後の住居でコツコツ勉強を続け、「メンタル心理カウンセラー」の資格を取得した。

「不登校などで悩む若い人をケアしたい、ペットを一時的に飼えなくなった方から預かるとか、殺処分されてしまう動物の命を守りたい。人と動物そのどちらも癒やされるカフェを開きたい」と西岡さんは笑顔で語った。

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ビッグイシューの活動は、「あなた」がいてこそ

「路上脱出・生活SOS ガイド」
上記のように、西岡さんが偶然手に取った「路上脱出・生活SOS ガイド」。NPO法人ビッグイシュー基金が情報を編集し発行している冊子で、累計で13万部以上を配布している。だが、夜回りなどで路上生活をする人々への配布には限界がある。ネットカフェや知人の家などで雨風をしのいでいる人には、より接触しづらい。


しかし誰でもいつでも座って過ごせる「図書館」という場所にこの冊子が置かれていたことで、西岡さんは冊子を手に取ることができた。

路上生活者を見かけることがある地域の方は、図書館やネットカフェに「路上脱出・生活SOS ガイド」を紹介する、街で見つけた当事者に手渡していただくなどのアクションで、ビッグイシューや他の支援団体に繋がり、路上脱出することができる人がいるかもしれない。
https://bigissue.or.jp/action/guide/

雑誌「ビッグイシュー」の販売

ビッグイシューが提供する仕事は、450円の雑誌を路上で販売することだ。雑誌が1冊売れると、販売者は230円の儲けとなる。売れれば売れるほど、路上脱出の日が近くなる。

可能な方は販売者から、直接の購入が難しい方は「コロナ緊急3カ月通信販売」を利用していただけると、コロナ禍で人通りの減った路上で苦闘する販売者を支援することができる。

販売場所 https://www.bigissue.jp/buy/
「コロナ緊急3カ月通信販売」 https://www.bigissue.jp/2021/09/20562/

ステップハウス

住所や連絡先・保証人・仕事や初期費用なしでも入居できる賃貸物件など、ほとんどない。しかしそれらがなくとも低廉な利用料で利用住居があることで、ホームレスの人たちはゆっくりと体や心を休め、これからのことを考えることができる。

NPO法人ビッグイシュー基金が運営するステップハウスは、アパート入居の前に期間限定で入居でき、滞在中には、必要に応じて支援を受けながら、住民票や携帯電話、銀行口座など、住まいを探すときに必要な条件を整えることができる。また利用料の一部は利用者本人の積立金としてプールされており、退去時に次のアパート入居や就職活動など、次のステップへもう一歩踏み出す助けとなる。 https://bigissue.or.jp/action/stephouse/


有限会社ビッグイシュー日本は18年、NPO法人ビッグイシュー基金は14年。

いずれの活動も、旗振りを有限会社ビッグイシュー日本・NPO法人ビッグイシュー基金が行っているものの、その存在を当事者に知らせたり、雑誌「ビッグイシュー」購入で販売者を直接支援したりといった支援、物件の提供などは、この記事の読者のようにホームレス問題に少しでも興味を持ってくださった方によるものだ。

コロナ禍が続くいま、そのような支援の持つ重要性はとても大きい。SNSでのシェアや、家族や知人との話題にしていただくことだけでも、西岡さんのような当事者の大きな力になる。

今後とも応援いただければ幸いだ。

ビッグイシュー基金 「応援・参加する」
ビッグイシュー日本 「あなたにできること」

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「脱ホームレス」のきっかけは、図書館でつくれる。たったひとつの館から始まった、「図書館でのホームレス支援」。


**新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急企画第7弾**


2021年9月4日(土)~2021年11月30日(火)まで受付。
販売者からの購入が難しい方は、ぜひご検討ください。
https://www.bigissue.jp/2021/09/20562/








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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。