経済的困難がある人でも、無料または低額で必要な医療が受けられる「無料低額診療事業」。同事業の周知に尽力する社会医療法人同仁会・耳原総合病院(大阪府堺市)の田端志郎理事長に話を聞いた。
田端志郎理事長
「無料低額診療」を知らない人が多く
必要な人が利用できていない
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、経済的に困窮している人が増えている。このほか、失業や少ない年金収入、保険証がないといった理由で、「体調が悪いけれど、お金がないから……」と病院へ行くのをあきらめてしまう人も少なくないと、田端志郎さんは言う。しかし、「そんな場合でも、無料または低額で必要な医療は受けられるんです」と力を込める。 「無料低額診療」は、経済的な理由で必要な医療を受ける機会が制限されないようにと設けられた社会福祉法に基づく事業だが、「知らない方が多く、必要な方が利用できていないのが現状」だという。
「私は以前、救急部門にいましたが、重症で救急搬送されたものの『お金が払えない』と治療を躊躇する方が年に何人もいらっしゃいました。こちらから事業の説明をすると、安心され治療を受けてもらえましたが、もしこの事業が広く知られていたなら、もっと早い段階から受診していただけたのではと思います」
お金がなくても、いつでも、どの都道府県でも、
必要な医療は受けられる
社会医療法人同仁会は、1950年に地元地域の人たちが「自分たちを診てくれる診療所をつくろう」とお金を持ち寄って設立した「耳原実費診療所」から始まり、「いつでも・どこでも・誰でも、命は無差別平等」という理念のもと、現在は耳原総合病院を中心に20事業所を展開している。そして現在、同仁会では月に約100人の患者が同事業を利用しているという。必要な人にこの制度の情報が届くよう「プロジェクトチーム」が会議を重ね、周知に力を注いでいるが、それでも「知らなかった」という声は多いそうだ。また、診療には適用されても、一般の調剤薬局では適用されないため、慢性疾患で多くの薬が必要な人にとっては今なお薬代の負担は大きい。「こういった課題について、政治にも政策提言を続けていきたい」と田端さんは話す。
プロジェクトチームのメンバー
無料低額診療を実施している医療機関は、全国の病院・診療所11万720施設のうち723施設(うち、全日本民医連に加盟する医療機関が429施設/2020年12月時点)。
ここではソーシャルワーカーなどの相談員や職員が相談を受け付けてくれる。在留許可のない外国人の方であっても同様だ。
「身近に経済的な事情で病院へ行けないという人がいれば、ぜひこの事業の情報を届けてほしい。どこの病院が実施しているのかわからないという場合は、フリーダイヤル(0120-667-334 /同仁会本部)へお問い合わせいただくか、下記のサイトをご覧ください。
全国の無料・低額診療にとりくんでいる事業所一覧(全日本民医連)
お金が全くなくても必要な医療は受けられるのです」
※厚生労働省は、「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」「人身取引被害者」などの生計困難者が無料低額診療の対象としています。 「低所得者」として制度の適用となる場合の1 ヵ月の世帯収入のめやすは下記です。 堺市の生活保護基準を基にした金額の例(住宅扶助を除く) 70 歳代の一人暮らし 約11 万円以内 70 歳代の夫、60 歳代の妻 約17 万円以内 30 歳代の夫婦、中学生、小学生 約30 万円以内 30 歳代のひとり親、小学生、5 歳 約25 万円以内 事業の対象となるかは地域の社会福祉協議会、福祉事務所等でも相談できる場合があります。 |
社会医療法人 同仁会
大阪府堺市堺区大仙西町6丁184-2
0120-667-334
https://www.mimihara.or.jp
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