『若者政策提案書』より、「若者政策提案・検討委員会」委員である津富宏さんのこの提案によるビジョンについて語られました。
ビッグイシュー基金の提案で、「若者政策」を提案しようという議論が始まったのは、2014年の春である。宮本みち子(放送大学副学長)委員長のもと、青砥恭(NPO法人さいたまユースサポートネット)、白水崇真子(一般社団法人キャリアブリッジ)、高橋温(弁護士・NPO法人子どもセンターてんぽ)、津富宏(静岡県立大学・NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡)ら支援現場を持つ4人の委員が集まり、東京で2回、大阪で1回、検討委員会を開いた。このほか、特別委員会を開き、阿部彩さん(国立社会保障・人口問題研究所)からレクチャーをいただいた。本提案書はこのプロセスの集大成であり、東京での会議室をご提供いただいたグローバル金融機関のUBSグループ、シンポジウムの会場をご提供いただいた損害保険ジャパン日本興亜株式会社をはじめ、お力をいただいた方々に御礼を申し上げたい。
欧州では2000年前後から、若者政策は確立された政策分野となり、若者は政策対象となった。脱工業化社会においては、若者の移行のリスクは、一過的な景気の問題ではなく、一貫した構造の問題であることが明らかとなったからである。
私たちは、この提案書を通じて、日本においても、若者政策という政策分野を確立し、政策対象としての若者を可視化したいと望む。2010年に子ども・若者育成支援推進法が施行されたとき、日本に、若者政策という政策分野が成立するという希望を持った人は少なくなかったと思う。しかし、結局はそうはならなかった。同法は、若者支援に必要な実質的な諸政策を、一括的な政策パッケージとして示すことをしなかったからである。
そこで、私たちは、この提案書を通じ、具体的な政策パッケージを提案することで若者政策とはどのようなものであるかを網羅的に示した。私たちは、この政策パッケージをもって若者のための基本法としての「若者法」を打ち立てたいと考える。この若者法の対象は、生徒でもなく、学生でもなく、求職者でもなく、失業者でもなく、障害者でもなく、社会的養護の対象者でもなく、ニートでもなく、ひきこもりでもない。これらの「一部の」若者ではなく、「すべての」若者である。
本提案書は、現場において若者支援にあたる人びとと、政治や行政において政策形成にあたる人びとを念頭に書かれた。提案書をたたき台として、支援者が具体的な政策の提案を行い、また、政策決定者がそれぞれの部署において若者政策を確立していくことで、若者政策が恒久的なものとなれば、支援者の活動環境が安定し、その結果、より多くの若者の人生を好転させることができるであろう。実は、この動きは、東京都世田谷区が、2013年に子ども・若者部に若者支援担当課を設置し、大阪府豊中市でも議論が進んでいるなど、この日本においても実現されつつあるものである。
私たちの提案は、この動きを加速し、日本の若者すべてが、若者政策によって支えられる社会をつくるための一歩である。
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