飲み会や晩酌を楽しんでいる女性にはつらいお知らせだが、「飲酒は乳がんのリスクを高める」という調査結果が出ている。世界保健機関(WHO)と米国国立アルコール摂取障害・依存症研究所(NIAAA)によると、1日1杯の飲酒でも乳がんになるリスクが5〜9%高まるという。米ケネソー州立大学健康増進・体育学教授のモニカ・スワンらが『The Conversation』に寄稿した記事を紹介する。
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【編集部補足】男性の乳がんは女性の乳がんの1%とも言われていること、遺伝子由来が多いと言われていることから、この研究では男性の乳がんリスクについては触れられていません。
「飲酒が乳がんを引き起こしている」という事実はどのくらい知られているのだろうか。筆者たちは、飲酒と乳がんの関連を女性がどれだけ認識しているかについて、米国の18歳以上の女性5千人以上に調査した*1。飲酒習慣や健康面の背景についても合わせて質問した。その結果、飲酒が乳がんのリスク因子であることを知っていたのは4人に1人しかいないことが明らかとなった。「まったく関連がない」と考えている人が35%、「わからない」が40%だったことも憂慮すべき結果だ。
年齢、学歴、人種によっても認識に差異が見られた。高学歴の若い女性や、アルコール問題に直面している女性は比較的、飲酒と乳がんの関連を認識していたが、低学歴の高齢女性や、飲酒習慣がない女性たちの認識は低かった。また、白人女性に比べると、黒人女性の認識は低かった。
*1 Demographic disparities in the limited awareness of alcohol use as a breast cancer risk factor: empirical findings from a cross-sectional study of U.S. women(2024年4月発表)
研究者、保健当局、擁護団体では、飲酒と乳がんの関連について周知させようと働きかけているが、そうしたメッセージが多くの人に伝わっていないことが浮き彫りとなった。飲酒のデメリットから目を背けたいがために話題にすることすら嫌がる人もいる。健康への影響を認識できていない人が多数派となっているののは、飲酒のメリットを喧伝する動きの方が大きいことも影響しているのではないだろうか。
飲酒と乳がんの関連について、もっとわかりやすく大々的に伝えていくことができれば、女性のより健全な選択を後押しできるだろう。多様な人々にアプローチする啓蒙活動も有効だろうし、酒類のマーケティングや購入のしやすさに関する政策見直しによって、人々のお酒の飲み方を変えていくこともできるだろう。
アルコールのマーケティングにおいては、健康上のリスクや弊害を知らないふりをし、お酒をたくさん飲むことを普通のことと思わせたり美化することで、意図的に女性の飲酒を促すアルコールの「フェミナイゼーション」に対処する新たな政策を打ち出す必要がある。
![CON_Alcohol breast cancer](https://livedoor.blogimg.jp/bionline/imgs/9/9/99e3582a-s.jpg)
Photo by Kelly Sikkema
世界保健機関(WHO)でも、飲酒がらみの被害を減らすべく、アルコールへの増税や、広告やマーケティングへの規制を厳しくすることを勧告している。飲酒量を減らすことで乳がんリスクを下げられる可能性がある。ストレスがたまったらお酒を飲む、その前にいま一度健康への影響をよく考え、飲むべきか否かを選択してもらいたい。
Drink Less for Your Breasts
https://drinklessforyourbreasts.org/
東京都保健医療局 #女子けんこう部
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/joshi-kenkobu/insyu/03/
By Monica Swahn and Ritu Aneja
Courtesy of The Conversation / INSP.ngo
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