若者が世界を変えつつある。前回の記事(10代の感性が社会を変える。アメリカの銃乱射事件をきっかけに、発言力を増す若者たち)で紹介したのはアメリカの若者だが、オーストラリアにも目覚ましい活躍をする若者たちがいる。まずは 17歳の発明家を紹介しよう。
オーストラリア人として初めて「インテル国際科学技術賞」を受賞
発明家の名前はマッキンリー・バトソン。乳がん患者のために、放射線治療を ”受けていない” 側の乳房を保護する「スマート・アーマー(Smart Armor)」を考案したのだ。2017年、彼女はオーストラリア人として初の受賞となった「インテル国際科学技術賞」(トランスレーショナル医療分野で第1位)を皮切りに、国内・海外含め数々の賞に輝いている。
私が「発明」を始めたのは小学2年の時です。最初の “発明品”はサングラス。2枚の偏光板の1枚を曲げると暗さを調整できるというものでしたが、かっこいいものではありませんでした。
現代は、科学へのハードルがとても低くなっている時代ですよね。私たち人間はすでに多くの情報を手にしている。でも「科学」は未知なるものを研究し、さまざまな問題への解決策を見出そうとする、そこに私は惹かれています。これから先の私たちの生き方を実際に形づくるものに関わっていきたいと思っています。
家族との何気ない会話がヒントに、学校の先生たちも研究をサポート
「スマート・アーマー」をひらめいたきっかけは、晩ご飯中の家族とのおしゃべりです。 ある日、医学物理の分野で働いている父が、乳がん患者の放射線治療を受けていない側の乳房に放射線があたり過ぎると、やけどなどの副作用を引き起こすことがあるという話をしてくれました。 高校1年生だった私は単純に、どうして放射線を保護するものがないんだろうと不思議に思いました。 「なんだかできそうじゃない?」ぐらいの気持ちで、やってみることにしたんです。
ですからこの発明は、家族との会話がなかったらあり得ませんでした。そう、私一人ではなく強力なチームがあってのこと。先生たちも親身になってサポートしてくれ、とても感謝しています。
「放射線を保護するのは鉛」という常識を疑ってみた結果
若いと、常識にとらわれない発想ができるのかなと思います。 たとえばスマート・アーマーは銅製。放射線を保護するものとして世界的に認められているのは鉛ですから、放射線業界の人なら疑問を持つところでしょう。
でも私が実験してみたところ、肌の表面では鉛より銅の方が20%も防御効果が高かったんです。指導してくれた先生からも、そんなはずはないよ、もう一度実験してごらんと言われました。何度もやり直しましたが、毎回同じような結果で。 やる前から実験結果を決めつけない、これは若さの強みではないでしょうか。
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人生経験が足りないことは“障壁”ではない
もちろん自信が持てない時もありましたが、長いプロセスにおいてはそれも当然のことだと思います。でもそれは若いからではありません。 私はまだ17歳、人生経験も全然足りていないことは自覚しています。でもそれを ”障壁” に感じたことはありません。とりわけ「発明」の分野においては、若者には考えられているよりずっと多くの能力が備わっていると思います。想像を膨らませ、常識破りの考えができますからね。
私の兄もちょっとした発明家で、その影響もあります。5歳上なので、いつも兄がやることを見ていましたから。兄の発明は決して自分のためでも、コンテストで優勝するためでもなく、いかに人を助けることができるかという視点だったので、私も自然とそう考えるようになりました。誰か他の人のためになる、これほどすばらしいことはないと思っています。
大学では英文学も専攻したいと思っています。理学と英文学、二つの学位を取りたいんです。そう言うと驚かれますが…英文学も大好きなんです!
(編集部補足:2019年12月現在、試作品による臨床試験を進めており、今後の実用化が待たれる。)
By Katherine Smyrk
Courtesy of The Big Issue Australia / INSP.ngo
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