米テネシー州ナッシュビルには、毎週、ホームレスの人々向けに無料でヘアカットを提供している団体がある。彼らの活動について、ストリートペーパー『コントリビューター』誌が取材した。
近頃、月曜日の夜になると戦没者記念広場がにぎわいを見せる。百人を超える人々が集まり、散髪の順番待ちをしているのだ。
「もうちょっと刈り込んでもいいよね?」黒いニット帽のヘアスタイリストが椅子に座る男性に聞く。ピンク色のモヒカン刈りで、ハサミを巧みに操るスタイリストの名前はジェン・ハーレー。彼女の散髪ブースからは、マドンナやマイケル・ジャクソンなど80年代のヒット曲が鳴り響く。
Photos by Jesse Lendzion
週に一度、「ナッシュビル・ストリート・バーバーズ」の移動ヘアサロンが開店すると、ダウンタウンのごく普通の一角に陽気な雰囲気が広がる。
Instagram: https://www.instagram.com/nashvillestreetbarbers/
団体設立者のキャロライン・リンドナーは5年前にこのアイデアをひらめいた。美容師としての長年の経験から、髪を切ることがもたらすチカラはよく心得ていた。一市民として、自分のスキルを活かして何か人の役に立つことがしたいと考えたのだ。
ある日Facebookを見ていたら、家がない人たち向けに移動式シャワーを提供するNPO団体「シャワー・アップ・ナッシュビル(Shower Up Nashville)」の記事が目に止まった。メッセージをやり取りし、彼女はヘアカット担当での参加を決めた。
「理容師やヘアスタイリストたちと協力して、いろんな非営利団体向けにヘアカットサービスを提供して5年になります。これこそ、人に喜びや自尊心を与え、自信まで取り戻してもらえる活動です。彼らを見る世間の目も違ってきます。髪を切るのはそれくらい大きな意味があること」
「シャワー・アップ」でのボランティア活動を始めて数カ月、奉仕精神の強い人たちとのつながりができ、「ナッシュビル・ストリート・バーバーズ」が誕生した。今では、かなり腕のいい美容師たちも参加してくれるようになり、散髪待ちの列ができるほど。日によっては80人もの髪を切る。
Photos by Jesse Lendzion
「散髪する時に生まれる、人と人のつながりはとても大事です。その人に似合うヘアスタイルを見つけるお手伝いができてうれしいです」美容師のハーレーは言う。彼女は美容師として23年間働いた後、今はヘアケア用品の会社代表を務める。「ナッシュビル・ストリート・バーバーズ」には3カ月前から参加している。
Photos by Jesse Lendzion
「お金だけ渡すんじゃなく、こんな活動だったら情熱を持って取り組めるなと思えたんです。今はもう髪を切る仕事をしていないので、やりがいのある活動です。ホームレス状態にある多くの人たちは、社会の最下層にある自分たちは惨めで社会から無視された存在と感じています。そんな風に思うべきではないのに」
Photos by Jesse Lendzion
ハーレーとリンドナーの二人にとって、この活動の肝は次の一点に尽きる ー 人々は違いよりも似てる部分の方が大きい。
「この活動をとても大切に感じるのは、来てくれる一人ひとりに自分の姿が重なるから」とリンドナーは言う。
「私と彼らの境遇なんてほんの少し違うだけ。家がないことで抱く嫌な思いをすっかり忘れられるくらいの体験を提供できるのなら、私の役目を果たせたことになります。私がどん底状態にあった時も同じように親切にしてくれた人がいましたから、今度は自分がしてあげる番です」
Photos by Jesse Lendzion
現在、「ナッシュビル・ストリート・バーバーズ」では資金調達キャンペーンを行っている(2018年9月より開始。12月時点で当初の目標額2,000ドルを超える2,600ドルを調達済み)。集まった資金で、コードレスシェーバー/ライト/雨天用ポータブルシェルター/椅子などの備品購入にあてる計画だ。
gofundme.com/632l92g
By Bailey Basham
Courtesy of The Contributor / INSP.ngo
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