最初に「ファックアップ・ナイト」が開催されたのはメキシコだが、その後、世界的に広がり、今や90か国、321都市で開催されるまでになっている。2018年1月からオーストリアのザルツブルクでこのイベントを主催しているアレクサンドラ・ナガレは、“失敗”に対する人々の受け止め方が変わってきていると喜ぶ。ザルツブルグのストリート誌『Apropos』への寄稿記事を紹介する。
失敗談をあえて表舞台で披露
人生はそんな順風満帆にいくものではない、そう認め合う場が「ファックアップ・ナイト」だ。筆者はウェイトレスをしていた頃、お客さんの服にマンゴーラッシーをぶちまけてクビになったことがある。実は、辞めさせられたことは、それまでにも何度かある。このイベントに登壇しようと思ったのは、そんな過去から脱け出したかったからだ。
Photo: アレクサンドラ・ナガレ
初めて参加してみて、大きな安心感を覚えた。 数人がそれぞれ約10分の時間内で自分の失敗談を披露するのだが、失敗を“なかったこと”にするのではなく、あえて大っぴらに公表することで、自分の失敗体験をまた違った視点で捉え直すことができ、聴衆は同じ失敗を体験することなく学びを得られるのだ。
失敗を隠すのではなく、失敗から学ぶ姿勢
私たちは誰でもミスを犯すが、そのことをひた隠しにするのではなく、その経験を他者とシェアし合うことで学び合おうというのが「ファックアップ・ナイト」の狙いだ。仕事のことでもいい、結婚生活がうまくいってないことでもいい、どんな人でも自分のストーリーを語ることが歓迎される。 重要なのは、そこから何かを学ぼうとすること、その姿勢を他の参加者らと分かち合う心構えができていること。
私たち人間の価値は「成功」によって測られる傾向がますます強まっているように思う。それは学校生活でも仕事場においてもだ。“高い評価を受けられるのは何かを達成したときだけ…” 心のささやきは、年を重ねるにつれ大きくなっていく。 バカにされるから、あきられるから、そんな思いから新しいことへの挑戦を思いとどまる人も少なくない。
ファックアップ・ナイトは、ミスや過ちを社会の表舞台へと押し上げる一歩。 失敗を社会で共有し合うのだ。 「ええ、失敗はしましたよ。でも、だからって“負け組”なわけじゃなし、もう一度やらせてください」本来、心の声はそうあるべきなのだ。
このイベントに参加すると、「失敗」を解き放つことができ、心の重荷を背負い続けることはないのだと思わせてくれる。 そして、常に完璧であらねば、完璧を目指さなくてはという思いを捨て去ることもできる。そんな思いにとらわれている暇は人生にはないのだ。
This is Fuckup Inc.
This is Fuckup Inc from Fuckup Nights on Vimeo.
ファックアップナイト公式サイト
www.fuckupnights.com
ファックアップナイト東京支部(次回2020/12/9(水)開催)
https://www.facebook.com/jointhefunintokyo/
By Aleksandra Nagele
Translated from German by Louise Thomas
Courtesy of Apropos / INSP.ngo
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