2022年2月、ロシア軍がウクライナに侵攻。この戦闘状態を受けて、近隣諸国のストリートペーパー代表が、ウクライナ国民の「民主主義を享受する権利」への連帯、そして国を逃れて来る人たちへの支援を表明した。国際ストリートペーパーネットワーク(International Network of Street Papers/INSP)が報告する。
ストリートペーパー各誌は、ウクライナにおける武力衝突により甚大な影響を被る一般市民、こうした人々のニーズに応えるべく緊急支援に取り組む支援団体への支持を表明します。そもそもウクライナは、貧困、失業、 国内避難民、ホームレス状態に陥る人の割合が高く*1、生活の基本的ニーズを満たせていない人たちが多くいます。そうした弱い立場にある人々、そして、紛争による脅威にさらされる民間人の命と人道的危機を深く懸念しています。
*1 ウクライナの人口は約4400万人。150万人以上が貧困ライン以下の暮らしをしている。
参照:Ukraine – Homeless World Cup 2020年の失業率は9.1%。参照:世銀データ
ウクライナ(オデッサ)の慈善団体 The Way Homeからの声
13smok/Pixabay
ウクライナ南部の港湾都市オデッサに拠点を置く慈善団体「The Way Home*2」がINSPにコンタクトを取り、今や戦地となった街のようすを知らせてくれた。社会的弱者への支援を行っているこの団体では、以前『The Way Home』というストリートペーパーを発行していた(現在の発行状況は不明)。
代表のセルゲイ・コスティンは「現在、我々は非常に厳しい状況にありますが、私たちにできることを着々と進めています。活動家たちから、子どもがいる女性たちをシェルターにかくまうよう要請を受けています。我々が支援している人たちは、平時でさえ最も弱い立場にある困窮者です。彼らが今どうしているのか、まだ確認が取れていません。支援を続けるため、とにかくお金を集めています」と語った。
*2 The Way Home https://wayhome.org.ua/en/ 寄付はこちらから。
参考:「The Way Home」の販売者インタビュー(2014年)
近隣諸国のストリートペーパーからの支援の声
ウクライナを逃れ、近隣諸国(ポーランド、チェコ共和国、ハンガリー、スロバキア)に避難する人は100万人以上に達するとみられている。各ストリートペーパー代表からの声が届いた。
ポーランドのストリートペーパー『Gazeta Uliczna』
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https://www.facebook.com/gazetaulicznaGU
「ウクライナの現状に戦慄しています」同誌のダグマラ・シュランドロビッチは話す。「新たな戦争が始まり、平和や安心感が踏みにじられるさまを目にしています。弊誌として、ウクライナの人々への連帯や友情を表明します。私たちにできる限りの支援を行いたいと思っています」
パトリツィア・ゼンカー編集長は、「以前からロシアがウクライナに侵攻するかもとの情報はありました。でも、現代の世界でそんなことできるはずがないと多くの人は思っていました。歴史的記憶、民主主義、道理を信じていました。なので、本当に戦争が始まってしまったこの事態に驚きを隠せません」
「ポーランドには大勢のウクライナ人が暮らし、働いています。その多くが事前に決まっていた仕事をするために来たのであって、戦争難民ではありません。でも今日、その状況が激変しました。すでにポーランドで暮らしているウクライナの人たちは家族を呼び寄せるでしょうし、さらに、ロシア軍に占拠された地域住人たちがウクライナ西部のポーランド国境に押し寄せるでしょう。パスポートを持っておらず、合法的に国境を越えるのが難しい人たちも多くいますから、ポーランド当局がどんな受け入れ体制を取り、規制をどうしていくのか、対応が待たれます」
「多くの団体が、通訳者の派遣、短期滞在用拠点、法的支援、心理的サポートなどの支援を行っていくでしょう。我々の事務所にはウクライナ国旗を掲げました。SNSのプロフィール写真にも、私たちの心の中にも国旗を掲げています。これからも、信頼できる情報をシェアしていきます。それが現時点で私たちにできることだと思っています」
チェコ共和国のストリートペーパー『ノヴィ・プロスター』
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「ウクライナ情勢に深い悲しみを感じています。戦禍にさらされる一般市民たちを支援していきたいと思います。チェコ共和国への避難者への人道的支援、そして社会的支援を行っていく用意があります」ダグマル・コクマンコヴァ代表は述べた。
スロバキアのストリートペーパー『ノタベネ』
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CEOで編集者のサンドラ・トルドヴァは言った。「私たちの心は、想像を絶する戦禍に苦しみ、無力感に襲われているであろうウクライナの人々と共にあります。パンデミックにより貧困が広がっていた中で、戦争まで起きてしまった。恐怖や不安感にとらわれるのでなく、それを人間性の価値を守るために立ち上がる勇気や結束へと変えていかねばなりません」
「自分が同じような状況に陥ったときにしてもらいたいと思うように、今、戦争の恐怖を味わっている人、避難先を探している人にアプローチしていきたいと思います。私たちだって、いつ支援を必要とする側になるか分からないのですから」
ドイツ(ハングルク)のストリートペーパー『ヒンツ&クンスト』
13smok /Pixabay
ウクライナから少し離れてはいるが、ドイツのストリートペーパーからもウクライナの人々との連帯を表明する声が届いた。
「ヨーロッパの国同士で戦闘を繰り広げているこの事態に深い悲しみを覚えます。いつだって、戦争は最も貧しい人たちに大きな打撃を与えます。とりわけ、ウクライナでホームレス状態にある人々のことを強く思っています」ユアン・シュト―ム理事は述べた。
By Colleen Tait and Tony Inglis
Courtesy of the International Network of Street Papers
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