(2013年10月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 226号より)
重大な異常事象。福島原発、大量の汚染水漏れ
東京電力は8月20日に、汚染水の貯蔵タンクから300トンもの漏えいが起きていたと発表した。漏れの兆候は7月から見えていた。その付近の作業員の被曝線量が高い値を示していたからだ。漏れた汚染水は一部が地下へ浸透していった。一部がタンクの囲いから外へ出た。さらに、排水口を通じて海へ流れ出た。
地表の水たまりの上50センチでの放射線量は毎時100ミリシーベルトに達していたという。強烈な放射能だ。原子力規制委員会は28日の会合でこのトラブルが国際事故尺度で「レベル3」(重大な異常事象)とした。国内で3番目に深刻なトラブルとなった。
地盤沈下でタンクを解体・移設したことで接合部にずれが生じたからだとも、設置場所の地盤沈下でひずみが生じたからだともいわれている。
仮に漏れても拡散しないようにタンク群ごとに高さ50センチの囲いがあったが、雨水が貯まるのを避けるために囲いについているバルブは開いた状態で放置されていたために、そこから外へ漏れ出た。
使用しているタンクはボルト締めの簡易なもので、耐用年数は3年から5年といわれているし、設置時から接合部は劣化しやすく2年程度で漏れが始まるともいわれていた。こんなタンクが300基以上も使用されている。ということは、次々に漏れが始まってもおかしくない状況ということだ。今回の漏えいは大規模な漏えいの序章かもしれないと考えるとゾッとする。
なお悪いことに、即効性ある対策が示されていない。とりあえずは今と同様のタンクを設置したとしても、将来に向けて溶接された堅固な大容量タンクを建造すべきだ。そもそも2年前から大容量タンクの建造を進めていれば、今回の事態は回避できていただろう。
汚染水に四苦八苦している原因は、毎日毎日、原子炉建屋に流れ込んでくる400トンもの地下水だ。これが放射能汚染水となるので貯蔵せざるをえない。その量はどんどん増えて、今では34万トンを超えている。実に、25メートルプール900杯分にもなる。ところが、根本的な地下水対策が進んでいない。対策が後手後手になり、ますます右往左往する、そんな現状だ。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)