グリーンウォッシュ/根拠なく環境にいいと思わせるマーケティングに要注意

2000年代、貧しい国の日常生活には、持続可能性(サステナビリティ)が随所に見られた。自分たちで野菜を育て、鶏を飼い、生ごみは肥料や飼料にしていた。多少の生活必需品を近所の市場で買うものの、ほとんどのものを再利用し、ごみはほとんど発生しなかった。しかし昨今の(先進国)社会では、プラスチックの消費量、ならびに過剰消費の程度には不安を感じざるを得ない。パキスタンで育ち、現在はアイルランドのゴールウェイ大学博士過程でエネルギー問題を研究しているララ・ルクが『The Conversation』に寄稿した記事を紹介しよう。

持続可能性を国連は「将来の世代が自分たちのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たすこと」と定義するが、実際にはあまりにもいろんな用語が使われているため、単なる聞こえのいいマーケティングと、環境保護の観点から真に倫理的といえるものとを区別するのは容易ではない。主要ブランドや大手企業の中にも、自社製品を実際よりも環境に配慮した製品のように見せかけて販売促進している事例は少なくない。

「グリーンウォッシュ」という言葉は、1986年、アメリカの環境活動家ジェイ・ウェスターヴェルドが、ホテルが環境を意識した取り組みとしてタオルの再利用を促したが、実のところそれは経費削減の対策だったことを指して使ったのが始まりで、今日では幅広い虚偽的マーケティング戦術を含めて使われている。

nito/Shutterstock, CC BY-NC-ND

私たち消費者には、自分たちの選択が及ぼす真の環境インパクトを知る権利がある。グリーンウォッシュに引っかからないために気を付けたい4つのポイントを挙げよう。

1. 聞こえの良い売り言葉に要注意

「ナチュラル」「環境に優しい」「サステナブル」「グリーン」といった、いかにもいいことをしているとの錯覚を起こさせやすいマーケティング上の言い回しには注意したい。というのも、これらの用語は専門的な定義や法的要件を満たさなくても使うことができる。

例えば、「堆肥化可能(compostable)」と「家庭で堆肥化可能(home compostable)」では意味合いが異なる。前者も環境に良いように聞こえるが、実際には高温での産業処理を必要とする。また、「分解可能(degradable)」という言葉にも、分解に要する法定時間は定められていない。この世の全てのものは最終的には分解する、ビニール袋でさえ。一切炭素を含まない(カーボンフリー)製品というのも存在しない。どんな工程、どんな製品、どんなサプライチェーンにも、炭素排出量が関係してくる。

マーケティングには、その製品やブランドがもたらす環境インパクトをきちんと反映した説明がなされていなければならない。

2. 企業ウェブサイトなどで根拠の確認を

何か商品を購入する前には、いったん立ち止まり、宣伝文句を裏付ける証拠をブランドが提供しているかどうかをチェックしてみてほしい。会社のウェブサイトにその証拠となるデータが掲載されているか、第三者機関の認証を得ているかなど。真に環境問題に配慮した取り組みをしている企業であれば、実際のデータを案内しているはずだ。

3. 認証やロゴの意味合いに注目

家庭の電気製品のエネルギー効率について有用な情報を提供するEU指令のエネルギーラベルのように、第三者機関による正規の認証を受けているかどうかをチェックしよう。かわいい見た目の漫画や絵文字を使って、それっぽいステッカーを貼り、認証を得ているかのように見せているものもあるので注意したい。

エコを謳うラベリングには規制がないものも多い。
MisterStock, CC BY-NC-ND

この問題への対策として、欧州委員会は先日、企業が環境対策を主張するには、ライフサイクルや環境フットプリント(環境に与える負荷)削減方法について裏付けを示すこと、「サステナブル」のラベルやロゴを用いる最低要件を定めるよう指令を発した。

プラスチックのリサイクルに関するロゴも混乱を招きやすい。「メビウスの帯」と呼ばれる3本の矢印からなる三角形は「再生利用可能」を意味する世界共通のマークだが、その中に番号が書かれているものはプラスチックの種類を示すだけで(7種類ある)、必ずしもパッケージが再生利用可能であることを意味するものではない。

メビウスの帯をイメージしたプラスチック再生利用可能のマーク
Askhat Gilyakhov / Alamy Stock Vector, CC BY-NC-ND

技術的に見て再生利用可能であっても、プラスチックを再利用するには、乾燥、洗浄、分別の工程が必要で、1本のペットボトルにも、ボトル本体、キャップ、ラベルなど3〜4種類のプラスチックが含まれ、リサイクルが難しいパーツもある。ごみを防ぐ目的でEUは新たに連結キャップを義務づけているが、これもリサイクルを容易にするものではない。

4. ブランド全体としての取り組みは?

環境問題に真摯に取り組んでいる企業としてよく名前が挙がるのは、アウトドア用品メーカーのパタゴニア社だ。35年前から、売上の1%を環境保護活動に充てることを誓約し(1% for the Planet initiative)、世界中の環境団体に8900万米ドル以上を寄付してきた。化粧品小売のラッシュ社も、水の消費量や包装廃棄物をできるだけ抑える取り組みを進めている。

一つの商品だけを見るのではなく、ブランド全体としての透明性や環境問題への取り組みに目を向けるようにしたい。明確な目標を定めていない、取り組みの進捗を情報公開していない、顧客に広く情報を提供していないようなら、きちんと証拠を提供し、顧客の声に耳を傾け、対応しようとしているブランドに切り替えることをおすすめする。

お金を払う消費者には、自分が買おうとしている商品やサービスの環境フットプリントを知る権利がある。

著者 
Lala RukhDoctoral Researcher in Energy, University of Galway

THE CONVERSATION

※本記事は『The Conversation』掲載記事(2024年11月11日)を著者の承諾のもとに翻訳・転載しています。

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