「日焼けを不潔だと誤解されるのが悲しい」ビッグイシュー販売者の声――奈良県人権講座での出張講義

ビッグイシュー日本では、教育機関や各種団体などに出張して講義をさせていただくことがあります。
今回の行き先は奈良人権部落解放研究所が開催した「これからの時代のための総合人権講座」。人権にかかわる相談・支援に必要な学びの機会である「人権アドバイザーコース」の1プログラムとして、「ビッグイシュー販売者の挑戦と販売者が語る半生」をビッグイシュー日本の吉田と、生駒のビッグイシュー販売者である吉富さんがお話しました。この記事では、当日の講義のエッセンスをご紹介します。

離島で育ち、路上に出るまで

ビッグイシュー販売者の吉富さんは長崎県の壱岐で生まれ、厳しい父と物静かな母のもと、18歳まで3歳下の弟と育ちました。
幼少期からチック症状(自分の意志と関係なく、瞬間的に目や体をピクッと動かしてしまう症状)があり、人と話すのが苦手で、小学生の頃にはいじめも経験したといいます。

高校卒業後は陸上自衛隊に所属し、4年ほど働いた後は東京で八百屋や土木、スーパー、メロン栽培などを転々とします。その後、建築業に飛び込んで働き始めた頃に、高いところでチック症状が再発するようになってしまいました。「(危険なので)辞めてくれ」と迫られ、住まいと仕事を同時になくしてしまいました。

仕方なく吉富さんは、次の仕事を探すために新宿を目指し、何日か歩き続けたと言います。大きな通りにあった段ボールの束を見かけて近づいたところ「取るな」と言われ、「ホームレスじゃないし」と応答するも、「鏡を見てこい」と言われ、「髭面、頭はボサボサ、薄汚れた顔」の姿が自分であることにしばらくしてから気づき、やっと自分がホームレス状態になっていることを自覚したそうです。

現在の売り場と暮らし

その後ビッグイシューと出会い、路上に立つようになった吉富さん。現在の売り場は、【奈良】近鉄学園前駅 りそな銀行前と【生駒】生駒駅 2階中央改札口です。スーパー勤務時代にきたえたポップやチラシ作りのスキルを活かし、自作のポスターを作るなど工夫をしています。

毎日長時間路上に立つなかで吉富さんは真っ黒に日焼けしていますが、清潔感には気を配っています。それでも「肌の色が黒いのを見て、風呂に入っていないんだろうと言われるのがつらい。」と、路上販売のしんどさを話してくれました。

さまざまな困難にもくじけず長年販売を続け、今では常連客も増え現在はアパートを借り、自炊をして、自立した生活をしています。

毎月1回の講談会は第77回へ

ビッグイシューでは、販売者が自らの興味や得意分野を活かすクラブ活動があります。

サッカー部もあり、かつて吉富さんは「ホームレス・ワールドカップ」の日本代表にも選ばれたことがあるなど、クラブ活動を満喫しています。

いま吉富さんは、上方の人気講談師・四代目 玉田玉秀斎さんの呼びかけで始まった講談部に所属し、月に1回「ビッグイシュー講談会」に参加、3月で第77回を迎えるこの会で、「玉玉亭壱秀」という名前で自身の人生を題材にした講談を披露し続けています。

当日は張り扇を鳴らしてミニ講談「ビッグイシューを始めた日」を披露。

行政、税金などについて質疑応答

当日は参加者の方から、吉富さんやビッグイシューに質問いただきました。

Q
路上販売を勝手にして、警察に何か言われたりしないのですか。
A

テーブルを設置するなどして「占有」する場合は違法ですが、ビッグイシュー販売ではテーブルなどの設置をすることはなく『移動販売』の形式をとっていますので、道路法上の占用許可(同法32条参照)等は必要ない※ですし、新しい売り場に立つときは、府や市、警察とも話をしています。
*参考までに、弁護士の見解をご紹介します。
https://www.bengo4.com/c_18/n_796/

Q
ホームレスの人は社会保障や医療につながることはできるのですか?
A

現在の吉富さんは国民健康保険に加入しており医療アクセスに問題はありません。
ただ、ホームレス状態の人など、 経済的困難がある人のために、無料または低額で必要な医療が受けられる「無料低額診療事業」という仕組みがあります。

参考:「無料低額診療」を知っていますか? お金がなくても病院での治療をあきらめる必要はありません

Q
ビッグイシューの販売者は確定申告もしているのですか?
A

吉富さんは住まいもあり、問題なく確定申告をしています。ホームレス状態の人で、収入から経費を差し引いた金額である所得が年間38万円を超える対象者はほぼいないに等しく、また住民票がないと納税地の設定が難しいため、家のある人より申告までのハードルは高くなりますが、対象となる販売者から要望があった場合は、「住所がなくても申告する方法」について税務署等との協議・調整のサポートをすることになります。

「ホームレス」とは“状態”に過ぎない

当日は吉富さんの体験談以外に、吉田からの「ホームレス問題の背景・構造」についても共有。
介護離職や災害での離職など、ホームレス状態に至る理由の解説や、一度路上に出てしまうと、履歴書に住所が書けないこと、保証人がいないこと、給料が後払いであることなど、一般就労が難しくなる構造的な壁、その状態を打破するためのビッグイシューの取り組みについてもお話させていただきました。

講座後の評価「いろんな方に参加してほしい講座」

講座後に寄せられた参加者アンケートでは、回答者の大半が「とてもよかった」「よかった」と回答いただくなど、講座満足度も高かったようです。「ホームレスのイメージが変わった」という回答も多数。

フリーアンサーでも、
「ホームレスの人たちへのイメージが全く変わった。目からウロコ(下線付き)」
「いろんな人権問題はまさに自分ごととして捉えていくことから始まると思った。講談とてもよかったです」
といった声が寄せられました。

格差・貧困・社会的排除などについて出張講義をいたします

ビッグイシューでは、学校その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。
日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。

小学生には45分、中・高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシュー日本またはビッグイシュー基金までお問い合わせください。
https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/seminner/

参考:灘中学(兵庫県)への出張講義「ホームレス問題の裏側にあること-自己責任論と格差社会/ビッグイシュー日本」

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