大阪・千林商店街にある、NPO法人ビッグイシュー日本が運営するシェア本屋「希望をつむぐ本屋さん」。ここは、店舗の中に設けられた棚やボックスを、希望者が月単位で借りる仕組みの「シェア本屋」と呼ばれる本屋さんです。本を売る人は、「棚」のオーナーとなり、棚に並べる本を自由に選び、好きな値段をつけ、時にポップやカードなどで思いを添えます。
それぞれの棚主は、どんな思いで本を選び、小さな棚をつくっているのでしょうか。
今回は「すいかのたね文庫」の棚主さんに話を伺いました。
「誰かの心の中に、“すいかのたね”を」
――「すいかのたね文庫」は、どんな棚ですか?
すいかにちなんだ名前にしたのは、すいかの赤、緑、白、黒がパレスチナ国旗と同じ色ということから、パレスチナへの連帯を示すモチーフとして使われてきたからです。
パレスチナというと、遠く離れた問題と捉えられがちですが、実は日本や私たちの社会ともすごく関係があると感じています。だからパレスチナの本だけじゃなく、戦争、日本の歴史、朝鮮半島をテーマにした本などを置いています。
私の棚に並ぶ本を見て、誰かがパレスチナや日本のことを考えるきっかけ(=たね)になってくれたらいいなと思っています。
――どんな人に本を手に取ってほしいですか?
「ニュースなどで聞くことはあるけれど、よくわからない」と思ってる人に届いたらいいなと思います。
自分自身も、2023年10月7日以降、イスラエルによるガザ侵攻・空爆のニュースを見て「一体なぜ、こんなことが起こってるんだろう」と感じて、最初に手に取った本が岡真理さんの『ガザとは何か』だったんです。
この本を読む前と読んだ後では、世界の見え方が結構変わったので、この本をもっと多くの人に知ってもらいたいと思ったことが、「すいかのたね文庫」を始めるきっかけになりました。
この『ガザとは何か』は、売れても補充して必ず棚に置いている一冊です。
たとえ手に取らなくても、そのタイトルや言葉が少し心に残るだけでも、十分意味はあるかなって思います。
――棚主として工夫していることはありますか?
棚には本だけでなく、パレスチナの人への寄付につながる雑貨や、棚主仲間と一緒につくった「平和をつくるブックリスト」の関連グッズなども置いています。

限られたスペースを有効に使うため、「棚の中にもう一つ棚」をつくり、その上にも雑貨を置くなど、小さな空間をぎりぎりまで活用しています。(笑)

――棚主になってみて、どうでしたか?
「すいかのたね文庫」の棚主になって、SNSでも発信を始めたのですが、別の本屋で初めて会った人から「すいかのたね文庫さん、知っています」「希望をつむぐ本屋さんの棚主さんですよね」と声をかけられたことがあります。
自分が好きで続けているんですけど、「希望をつむぐ本屋さん」という場所や、ホームレス状態にある人の仕事づくりにも興味を持ってもらえるとか、何かしらに貢献できてるのかも、って嬉しくなりました。
あと、同じようにパレスチナへの連帯をテーマにした棚を持つ「ふりつづみ天鼓堂」さんとの出会いも大きいです。
一緒に「平和をつくるブックリスト」を制作して、メディアにも取り上げられたりと、一人じゃ絶対できないことを、思いを同じくする仲間を見つけてできたということは、始める前には全く思いつかなかったことですね。
――店番の販売者とは交流はありますか?
「すいかのたね文庫」では、不定期でフリーペーパー「すいかのたね通信」も発行しています。書き続けるのは大変ですが、先日お店番のビッグイシュー販売者が手に取って内容を読んでくれて、「あれ、すごい良かったよ」って声をかけてくれたことがあり、とても励みになりました。
――「希望をつむぐ本屋さん」の好きなところは?
自分が「いい」と思う本や、多くの人に読んでほしい本を並べ、それを誰かに買ってもらえるということは、やっぱりうれしいですね。
あと、「希望をつむぐ本屋さん」ならではでいうと、私の棚を見に来てくれたり、本や雑貨を買ってくれたりすることが、ホームレス状態の人たちの仕事づくりにも間接的につながっているというのもいいよな、って思います。
「希望をつむぐ本屋さん」のある千林商店街は、物価上昇を感じにくい商店街なので、お買い物するのもおすすめです、とお話してくれました。
「すいかのたね文庫」
X:https://x.com/seeds_of_wtrmln
いまのイチオシ本:『メガホンとペンライト 韓国の「騒ぎながら民主主義」』/キム・キョンファ著/皓星社
「民主主義っていうのはただ制度であることではなくて、本来は私たちが表現の自由を行使することで成り立っているもの、ということが印象に残る本です!」

「希望をつむぐ本屋さん」

ビッグイシューが運営するシェア本屋。店番は販売者を中心に交代制。棚主も募集しています。
〒535-0012 大阪府大阪市旭区千林2丁目15−23
京阪「千林駅」から西へ50m。大阪メトロ谷町線「千林大宮」から徒歩8分。
