Genpatsu

(2011年11月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第179号より)




原発いらない福島の女たち」が呼びかけた「100人の座り込み」が、10月27日から3日間、経済産業省の前で行われた。初日には、福島から駆けつけた女たちに首都圏の女たちが呼応して700人を超える座り込みとなった。

思い思いのプラカードや幕がにぎやかに経産省を取り囲んでいた。引き続き30日から全国の女たちが1週間座った。同時に広島、大阪、京都、和歌山、富山、北海道など各地でも連動した行動が取り組まれた。

27日、福島の女たちは、野田佳彦内閣総理大臣、枝野幸男経済産業大臣など5人へ要請を行った。その内容は、原発を廃炉にしてほしい、定期検査に入った原発を再稼働しないでほしい、子どもたちの避難・疎開をすすめ、これを補償してほしい、原発交付金制度を廃止してほしい、の4点。11月23日にキックオッフ集会を予定している「脱原発をめざす女たちの会」には、女優の吉永小百合さんや竹下景子さんらも賛同している。広い支持が得られている。

前日には「福島原発震災情報連絡センター」の設立総会が衆議院議員会館で行われた。全国の自治体議員の有志らでつくる連絡センターだ。事故で被曝した子どもたちに汚染されていない食品を届けることや、避難・疎開・保養などの支援などを中心に、復興に向けた活動を進める。また「福島原発被曝者援護法」の制定もめざす。

こうした市民の取り組みに対して、エネルギー政策を議論する政府の委員の中には、まるで事故などなかったかのような意見が飛び交う。原発の輸出で企業の存続と外貨獲得を進めるべき、原発が止まり続けると電気代が上がり企業が海外へ流出する、などなど。さらに、原発のコストが他電源と比較して安いことをどうしても示したいようだ。経産省前で座り込む女たちの願いが彼らに伝わるまで、あきらめるわけにはいかない。

少し明るいニュースもある。政府は食品の放射能汚染(放射性セシウム)の暫定基準値を引き下げて、食べ続けても年間1ミリシーベルトに収まるように厳しくすることを基本に検討すると発表した。待たれていた対応だ。






伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)