(2009年10月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 129号より)


フタバスズキリュウの発見! 少年の努力と情熱が白亜紀の「小さな窓」を広げた

1968年、福島県いわき市の地層から発掘された「フタバスズキリュウ」の化石は、多くの化石ファンに夢を与えた。当時高校生だった発見者の鈴木直さんに、フタバスズキリュウへ至る道と、これからの希望を語ってもらった。



石炭層の調査から見つかった 白亜紀後期の「双葉層」

太平洋に面した福島県双葉郡富岡町から茨城県日立市あたりにかけての一帯は、かつて常磐炭田として栄えた。1923(大正11)年、この地域の石炭層を調査していた古生物学者で地質学者の徳永重康博士は、さらに古い白亜紀後期の地層を発見。そして、これを「双葉層」と命名した(徳永博士が双葉層として命名、後の研究者に双葉層群とされた)。双葉層群は、いわき市北部の四倉町から北に細長く延びた、8900万年前~8500万年前の地層だ。大きく3層に分かれ、最も古い足沢層からは二枚貝やアンモナイトの化石、真ん中の笠松層からは陸の生物の化石が見つかっている。

そして68年、最も新しい玉山層からクビナガリュウの一種である「フタバスズキリュウ」の骨の化石が発見された。首こそほとんど見つからなかったものの、頭・後方の首から腰までのひと続きになった背骨・胸骨の一部・骨盤・四肢骨(ひれ足)がそろった非常に状態のいい化石だった。

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発見者は地元に住む高校2年生の少年だった。その鈴木直さんは現在、「財団法人いわき市教育文化事業団」の職員として働いている。「発見までにはいくつもの出会いがあり、そのどれが欠けてもフタバスズキリュウにはたどりつかなかった」と、鈴木さんは振り返る。 専門書を読みあさり 同好会で手ほどきを受ける  小学生時代の鈴木さんは、SF小説がとにかく好きだった。

「学校の図書室では、宇宙狭しと暴れ回るヒーローを描いた子ども向けの小説ばかり読んでいました。宇宙に行く日を夢見ては、現実逃避していたのかもしれない」

自然科学に興味をもち始めたのは、小学5年の時だ。地球の成り立ちや生物の進化などをテーマとした60巻近い科学図鑑の申し込み用紙が、学校で配られた。

「まさかとってくれないだろう」と恐る恐る母に頼んだら、あっさり申し込んでくれた。  

そして中学2年の時、学校の近くの古本屋で『あぶくま山地東縁のおい立ち』という本と出合った。そこには、双葉層群から、クビナガリュウや魚竜の骨の化石が発掘されていると記されていた。双葉層群は幸い、叔母の家からほど近い大久川のほとりにも分布していた。夏になると泊まりがけで川遊びをしに行く、なじみの深い場所だ。鈴木少年はさっそく、本に出てくる化石の発見現場の調査を開始した。


後編に続く




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