(2013年4月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 212号より)
信頼回復は、廃炉のみ。「原発のない福島」訴えた県民大集会
「原発のない福島を!県民大集会」が3月23日に福島市あづま総合体育館にて開催された。午前中は霊山太鼓や下柴彼岸獅子、大谷じゃんがら念仏踊りなどのアトラクションが、午後は主催者の挨拶、佐藤雄平福島県知事のメッセージに始まり県民からの訴えが続いた。集会には県内外から7千人が参加した。また、並行して会場では地元産品の出店やパネル展示などがあった。
佐藤知事は「事故が終わっていないにもかかわらず、忘れさられていっている。しかし、粘り強く廃炉を求めていく」と訴えた。農協、漁協、森林組合、旅館ホテル生活衛生同業組合、高校生平和大使、県外避難者、福島の子ども保養プロジェクトなどからの発言は各人の体験を基にした内容だった。原発震災時の証言集ともいえる貴重なもので、事故を忘れないとは、こうした体験の積みかさねを伝えていくことだと感じさせた。
発言者の多くが「福島県民は避難でバラバラにされた。福島県内の住民たち、また、県外避難者と福島に住み続ける人たちの心もバラバラになっている。だからこそ、心を一つにして明日へ立ち向かっていこう。福島の美しさを子どもたちに伝えていきたい」と訴えていた。「県内10基の原発の廃炉」は全県民の願いであることがしっかり感じとれる集会だった。
会場は、あづま総合運動公園の一角にある。公園には陸上競技場や野球場など多くの施設が併設されており、たいへん広い。今は屋内施設しか利用できない。持参した測定器で空間線量率を測ってみたが、アスファルトの上は普段の2倍くらいで、土の上だと5倍から8倍ほどだった。
そして私たちが集会をしている最中も除染作業が続けられていた。表面を削り取った汚染土は黒や青の袋に入れられて陸上競技場のアリーナなどに置かれているのが見えた。除染廃棄物の行き先が決まらない上に、仮置き場もなかなか決まらない。運動競技場は仮仮置き場なのだ。芝の張替えを含め除染作業は来年10月頃まで続けられる計画となっている。
事故を起こした東京電力は爆発で大きく壊れた4基以外は運転再開を考え、準備を進めているようだ。県民に多大な犠牲を強いておきながら、運転再開などあろうはずがなく、廃炉しかない。早く決断することが事故で失った信頼を回復する道だ。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)