震災前から東北地方におけるホームレス支援の拠点でもある、東北最大の都市・仙台。

東日本大震災後は、市内の仮設住宅には津波などで家を失った方が暮らし、県内外からは復興の仕事を求めてきた人が集まっていました。

2011年からビッグイシュー基金では、仙台で路上生活者支援を行う団体を訪ね、震災後の現場の状況を伝えてきました(ビッグイシュー基金「被災地の路上から」ビッグイシュー・オンライン「震災から3年、被災地・仙台で何が起きているのか?」)。

今回は、2015年春の状況をお知らせします。

part.1はこちら> 

「現場で使い捨てされてきた人たちが、全国を渡り歩いている」

全国から除染や土木関連の仕事を求めてきた30-40代が、仙台の路上に出てしまう――PSCで聞いたのと同じケースを、仙台で15年前からホームレス支援に取り組む「NPO法人 仙台夜まわりグループ」でも聞いた。

「全国を渡り歩く人が仙台にも増えている」。そう話すのは、理事長の今井誠二さんだ。

団体では、2013年10月から「HELP!みやぎ 生活困窮者ほっとライン」(略称「ヘルプ!みやぎ」)という電話相談窓口を立ち上げているが、県外から来て除染の仕事に就いていたものの、仕事がなくなって住まいを失ったという人からの相談は多い。

「除染の仕事自体はあっても、雇っているのは下請け会社だから、ひとつの現場が終わると解散して、また次の現場が始まると人を集める、その繰り返しが多いんです。

次の現場まで間が空けば、寮費や生活費がかかってくるので、どんなに日当が良くても、結局給料がなくなってしまう。生まれて初めて野宿したという人から『寒いからどうにか助けてほしい』という相談もありました。

半袖でブリーフケースひとつ、見るからに素人ですよ。普通の派遣やアルバイト感覚で東北に来た若い人たちが路上に出てきている」と今井さん。

これまでとは違う、路上の若者たち

いま60〜70代でホームレス状態にある人たちの中にも、同じようにかつて建設現場などで日雇い労働をしていたという人はとても多い。しかし、いま路上に出てくる若者は、これまでの世代とはまったく様子が違うと今井さんは言う。

「夜まわりをしていても、物資配布や炊き出しの列には加わらない。声をかけても『自分はそういう人たちとは違う』という感じがあります。

次の仕事が見つかればすぐに仙台から出ていこうと思っているから、なかなか本当のことを話してくれない。路上にいる人同士、前は助け合って情報交換もしていたが、いまはコミュニケーションがなくて世代間で断絶が起きている。

昔からいる人、除染の仕事で一時的にいる人、全国を流れて居場所がなくて来た人など、顔ぶれの入れ替わりが激しいです」。
 

事務局次長の青木淳子さんによれば、路上の年齢層も変化している。生活保護受給などで施設への入所が進んだことで高齢世代が路上からいなくなる代わりに30-40代が増え、ときには20代や10代からの相談がくることもあるという。

 

また、今井さんは、症状の重い依存症の人が増えているとも感じている。

「長い間飯場(建築現場などでの作業員の宿泊施設のこと)で暮らしていると、宵越しのお金を持たなくてもいいようになるんです。雇う側も意識して、前渡し金でご飯を食べさせ、酒も立て替えて飲ませるなど、給料をどんどん使わせるように仕向けている。

そうやって手元にお金があまり残らないようにすれば、手軽に引き止めておけるし、人手が足りなったら、いつでも呼び戻せるでしょう?使い手にとっては、軽いアルコール、ギャンブル依存症のほうが都合がいい場合もあるんです。

でも、依存症は病気だからだんだんと進行していく。結局、仕事に行けなくなったり、スキルやお金が残らないまま高齢になったりして、ただ時間が消費されるだけで、仕事をしても何も残らないで終わりになる。

それはずっと昔からある構図だけれど、復興や除染で莫大なお金が動いていることで、さらに悪化している印象です」。
 

「使い捨て」ではない、自立への道を

2013年10月に開設した「ヘルプ!みやぎ」には、1年間でのべ約1,000件の相談電話がかかってきた。

仙台市外からの電話も多く、大規模な復興工事が行われている地域では、ほとんどの単身用アパートが作業員寮として借り上げられているため、生活保護をとるための住居がなく、夜まわりグループのもつ簡易住宅に入りたいという相談もある。
 

「これまで僕たちは、『ハウジングファースト』と呼ばれる形態の支援を続けてきました。まずは住まいを用意する。その後に債務をなくしたり、病気を治療して生活をたてなおしたり、高齢の人には『余生をゆっくり過ごせばいいよ』という形の支援ですね。

でも、最近はそれだけでは済まない状況になっています。若い人が多く、自分で料理や掃除ができないなど生活能力がない。依存症を抱えていたり、金銭管理ができない人も多かったりします。

その背景には知的障害や発達障害が隠れているケースも多いと思います。じゃあ、そういう人たちが、どうしたら本当の意味で自立できるのか…頭を悩ませています」

 

そうした自立へのひとつの希望として、夜まわりグループでは中間的就労(一般の就労が困難な人たちが、日常生活の自立や社会参加のために短時間の軽作業等で働くこと)の場をつくる取り組みを行っている。

これまでもリユース事業、部屋の片付け事業などを行ってきたが、さらに農作業などもスタートさせている。

「いまは除染や自宅再建の仕事は人手不足なので、求人募集は結構あります。でも、路上に出てしまっているのは、結局そういうところで使い捨てにされてきた人たちです。

その人たちを、またそこに戻すのが良いことなのでしょうか。一つの現場が終わったら、また使い捨てされるだけですよ。

それより、部屋に入れているうちに債務整理したり、夜間中学に通ったりしながらでも、掃除や福祉などの技術を身につけて、長く続けられるような仕事についたほうがいい。中間的就労はそのための手段のひとつだと考えてやっています。なかなか運営は厳しいですけどね…」


路上生活者は、「見えなく」なっただけ

2015年1月に厚生労働省が実施した「ホームレスの実態に関する全国調査」では、仙台市内の路上生活者数は110人、宮城県全体で117人と発表された。3桁という数字は全国的には高いものの、人数は昨年より減ったことになる、
 

「施設への入所が進んだことで、これまでのような路上生活者の人数はたしかに減っています。だけど、施設に入っていても結局は不安定居住状態。終の棲家じゃない。

不安定居住・不安定就労で、将来どうしたらいいのかという状況に関しては、ほとんど前進していない。とりあえずの部屋に入れたことで、たくさんの人が見えないようになっただけなんです。

彼らが抱えている精神疾患や人間関係、生活管理や負債の整理だとか、問題を解決して、手に職をきちんとつけていくことをしない限りは、本当の意味でホームレス問題を解決したとは言えません。

結局、使い捨て労働で全国を渡っていく人はなくならない。ワーキングシェアでもいいから、適材適所の仕事場で、それなりに持続的にきちんとした賃金を貰えるようにする仕組みが必要なんです」

   

最後に仙台の路上で起きている問題に、東北の外から関われることはあるかと今井さんに尋ねるとこう返ってきた。
 

みなさんの地元にも、ホームレスの支援団体が必ずあるはずです。それに関心を持って支えてほしい。

震災が起きて被災地にスポットがあてられましたが、次は東京オリンピックでもホームレス問題が話題になるでしょう。でも結局は、それぞれの地域で抱えている問題から起きていることなんです。

労働の現場で使い捨てられて、全国を渡り歩かねばならない人が出てこなくて済むように、ぜひ地元に目を向けて、足元から皆さんで支えてください」

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■ NPO法人 仙台夜まわりグループ

昼・夜まわりのほか、炊き出し、食事会、相談会などを定期的に実施。ビッグイシュー販売者支援も行っている。

そのほか、リユース事業、部屋の片付け、農作業などの中間的就労の場づくりにも取り組む。2013年10月からは、「HELP!みやぎ 生活困窮者ほっとライン」を開設し、年中無休で相談を受けている。


【活動にご賛同くださる方からの寄付、仕事や休耕地を募集しています】


〈お振込み先〉

■郵便振替 02240-5-66005 (ゆうちょ銀行 二二九店  当座 0066005)

 

仙台夜まわりグループ

■七十七銀行 八本松支店 普通 5214271

  

特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ

■宮城第一信用金庫 保春院前支店 普通 1014823

特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ

※また、季節ものの衣類など物資も募集しています。詳細はHPをご覧ください。
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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。