こんにちは、ビッグイシュー・オンライン編集長のイケダです。9/1に発売した222号から、読みどころをピックアップしてご紹介いたします。
40万ヘクタールの耕作放棄地をゼロに
最新号の特集は「未来をつくる仕事」。特色あるビジネスを展開する、ユーグレナ、マイファーム、enmonoという、3社のベンチャー企業の創業者たちのインタビューが掲載されています。
いずれのベンチャーも大変興味深いビジネスを展開しているのですが、個人的に特に痺れたのは「40万ヘクタールの耕作放棄地をゼロに」という見出しで紹介されている、1982年生まれの起業家・西辻一真さんのインタビュー。
西辻さんが経営する株式会社マイファームは、2007年9月に立ち上がりました。起業の原体験は、高校生の頃に遡ります。
高校1年の時、通学途中で荒れ放題の田んぼや畑を目にし、調べてみると、そこは減反政策などで放棄された農地などだった。「人が生きていくため、食べ物をつくる農業が不可欠なのに、農地を使わないでいいのか?」と疑問をもった西辻さんは、農地をよみがえらせるため、地域振興につながる作物をつくり出す研究者になろうと決意する。
そして農学部に進学し、品種改良などの研究に没頭した西辻さん。4年間の研究生活を経て、耕作放棄地を所有者に借り、そこに利用者を集める「貸し農園」ビジネスを始めます。
しかし、前例のない事業だけあって、そう簡単にはうまくいきません。飛び込み営業で農地を貸してくれる人を探すも、300件回って、収穫はゼロ。半年以上奔走した結果、なんとか知り合いのつてで農地を貸してくれる人に出会い、京都で第一号の農園を開園します。
立ち上げには苦労したものの、起業から6年が経ち、事業は順調に広がっています。
13年8月現在、マイファームの体験農園は全国各地に86カ所、3千組弱の家族が利用している。
現在、「体験農園マイファーム」以外にも、
・未来の農業と食ビジネスを学ぶことができる「アグリイノベーション大学」
・就農希望者向けのスクールマイファームアカデミー
・自分で作った野菜を自分で売る「ふくふくファーム」
・栽培管理アプリ「マイファーム栽培キット」
・農具や種、食品などが買えるオンラインショップ「畑師」
・津波による塩害の被害を独自の土壌改良材で復旧し、栽培に成功した「復興トマト」加工品の販売
といった多方面で、農業ビジネスを展開しています。
西辻さんは日本の農業についてこう語ります。
「日本は農業ビジネスで勝負しようと思っても、勝てない」と言う西辻さん。「でも、日本の農業は人間と農作物の距離が近く、小さなものを有機的につなげることは得意。それが日本的な農業の強みです。これから世の中は絶対にその方向に向かっていくと僕は読んでいます」
力強い確信です。ぼく自身もそうですが、「自分の口に入るものは、自分たちで育てたい」という欲求を抱く人は、震災以降特に増えているように感じます。マイファームのビジネスは、まさに「未来をつくる仕事」ですね。
特集ではその他にもミドリムシビジネスで上場した「ユーグレナ」、中小企業の力を最大化する「enmono」が紹介しています。こちらも大変面白いビジネスですので、関心がある方はぜひ手に取ってみてください。
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