草郷さんの講義から(1)を読む

「経済成長は必ずしも人を幸せにはしない」ということは多くの先進国の研究でも明らかになっています。『持続可能な幸福』はどのようにすれば生まれるのでしょうか。関西大学社会学部教授の草郷孝好さんの講義を訪ねました。

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 *この記事は、地域の課題解決を担う人材を育成することにより地域の魅力を高め、地域の未来を創造していくことをめざした「とよなか地域創生塾」の公開講座の2回目「幸せな地域社会をめざすアクション・リサーチの試み~市民協働と信頼構築のカギは何か」の講義をもとにしています。


幸福度や生活満足度と相関のある要素は何か、というと、回答のTOP3は家計の安定、健康、家族の関係です。これは日本だけでなく、他国の調査でも同様の結果です。

地域コミュニティとの関係、と回答する人は多くはありませんが、この授業では、大切なものとして取り上げていきます。

編集部補足:
平成19年の「国民生活白書」によると、家族・地域・職場の人とのつながりは精神的安らぎをもたらす、という調査結果が出ています。

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出典:内閣府 国民生活白書 平成19年

持続する地域社会をつくろう

(1)で紹介したブータンでは、国を挙げてGDP(国内総生産)ではなく、GNH(国民総幸福)を指標にPlan-Do-Seeのサイクルが回されていました。日本では国を挙げて取り組むことは、今のところはなさそうですが、市民主体の地方自治により「持続する幸福な地域社会」をつくることは可能です。

とはいえ、「持続する幸福な地域社会」は行政任せではなく、住民の中から現場で何をしたらいいのかを考える人たちが育たないと生まれません。
地域が変わるために必要なことは、市民主体の地方をつくるということです。
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そして、その際に経済的な要素ではなく、生活の質(幸せ)の決め手となる要素を重視する、ということを軸にすることで、持続する地域づくりが可能となります。
その手法として「アクション・リサーチ」が有効だと草郷さんは言います。

アクション・リサーチとは?草郷さんの定義

アクション・リサーチとは、組織あるいはコミュニティの当事者(実践者)自身によって提起された問題を扱い、その問題に対して研究者が当事者とともに協働で問題解決の方法を具体的に検討し、解決策を実施し、その検証を行い、実践活動内容の修正を行うという一連のプロセスを継続的に行う調査研究活動のことを意味する。(小泉・志水編(2007)pp.254-255)

ここで重要なのは「当事者(実践者)自身によって提起された問題を扱い、その問題に対して研究者が当事者とともに協働」で進めることです。

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これまでのリサーチの手法は、主体が研究者であったのに対し、アクション・リサーチの手法は地域住民、学生、顧客、患者などその課題における当事者が主体となり研究者と協働することに特徴があります。
また、研究の対象となる客体が課題に一番影響を受ける当時者や組織となるのが特徴です。


参考図書


草郷孝好(くさごう たかよし)
東京大学経済学部卒業、学生時代から住民参画型の社会経済開発と持続的発展に興味を持つ。関西大学社会学部社会システムデザイン専攻教授。(人間開発論)

※草郷さんは、大学の授業でビッグイシューのお話をさせていただいたご縁があります。
  関西大学・社会学部へ出前授業!-学生から見たビッグイシューの疑問







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