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日本企業、改ざんが常態化、地に落ちた世界での信頼

昨年は企業の不正事件で暮れた。10月に神戸製鋼所が記者会見を開き、子会社でのアルミや銅製品などの品質データ改ざんや日本工業規格(JIS)違反などを公表。改ざんは原発の資機材にも及んでいたことも明らかになった。改ざんのあった製品の納入先は525社、疑いのある納入先は11社におよぶ。





改ざんの内容はこうだ。顧客との契約上の仕様に適合していないのに、適合と検査証明書を書き換えて出荷、あるいは、バネ用鋼材の強度試験の値を規格に合うように改ざん。これは日本工業規格に違反する法令違反行為だ。

同社ではこれまでにも改ざんが繰り返されてきた。たとえば2006年には、加古川製鉄所で環境基準を超える硫黄酸化物などを含んだ煤煙を放出しながら、測定データを改ざんして基準に適合しているように装っていたことが明らかになり、社会的批判を浴びた。このほかにも、遡れば実に40年間にもわたって、神戸製鋼の子会社群ではさまざまな分野で改ざんが常態化していたという。

日本経済団体連合会の榊原定征会長は「わが国の製造業への信頼に影響を及ぼしかねない由々しき事態」と記者会見でコメントした。しかし、神戸製鋼の子会社群のみならず、他企業でも同様なことが行なわれていた。たとえば、日新製鋼、三菱マテリアルなどである。日本製品の品質の高さは国際的にも信認されていたが、それは神話に近いものだったのだ。日本社会の根底におよぶ改ざんの常態化は非常に根深いものがあると考えられ、よほど厳しく見直さないと信頼回復には至らないだろう。


原発への影響も深刻、玄海・大飯原発は再稼働延期
管理のずさんさ自体が問題

「神戸製鋼グループの原子力技術と製品」というパンフレットによれば、原発、再処理工場、燃料材料などに、実に多くの同社製の資機材が使われていることがわかる。それだけに影響は深刻だ。

すでに明らかなのは、ウラン濃縮工場で使用する遠心分離機の部材、福島第2原発の配管などで、これらは納品済みだが未使用だという。これまでの調査で、電力各社は過去1年間に納品された資機材では上記2件以外に不正品は使われていないと報告しているが、これは神戸製鋼から直接の納品分のみで、関連会社を通したものはさらに調査中だ。このため、玄海原発と大飯原発(ともに3、4号機)は、18年のはじめに予定されていた再稼働を2ヵ月ほど遅らせると、九州電力と関西電力がそれぞれ発表。また、六ヶ所再処理工場も調査に入った。ここでは配管の総延長は1300㎞にも及び、納品経歴の調査も時間がかかることが想定される。

原子力規制委員会は電力各社に報告を求め、その調査結果待ちだ。5年程度しか記録が残っていないというが、どこまで遡って調査するのかは確定していない。また、燃料被覆管では神戸製鋼グループは全国の70%のシェアを占め、不正があれば全原発に関係してくるはずだが、この点については調べる予定がないらしい。

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そもそも電力各社とて、02年には東京電力が不正な手段で原発を定期検査に合格させていたことが明らかになっているし、他社も同様に過去の臨界隠しなどを06年に公表している。そのような会社による自主的な調査結果を信用してよいものか、疑念が残る。原子力規制委員会は調査権を使った厳しい対応をするべきだ。

品質データ改ざんがあったとしても、想定より早く欠陥が出てくるかもしれない程度で、安全上は問題がないといった声も聞かれる。しかし、いつ事故が起きるか予測はつかず、管理すべきことがきちんとできていないことが問題なのだ。また、ムダだと言われる原発の検査体制が本当にムダなら、制度を変えるべきだ。それもせずに不正が表に出ているのに「問題なし」というのは言い訳にもならない。徹底した調査と結果の公表なくして、再稼働はありえない。


(伴 英幸)

(2018年1月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 326号より)


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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