2018年11月、「日韓プルトニウムシンポジウム」を韓国の平和協同研究所(IPC)と共催した。お互いの国の再処理計画に反対していくための2年プロジェクトの初回シンポジウム。外務省の職員や内外の専門家を招いて、朝鮮半島の非核化や余剰プルトニウムの削減について報告や議論を行った。





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2018年11月26日、東京で開かれた「日韓プルトニウムシンポジウム」の様子

「核の傘」を「非核の傘」に
南半球の国すべては
非核兵器地帯

朝鮮半島の非核化問題の具体的なアイディアとして、「北東アジアの非核兵器地帯構想」が紹介された。その提唱者である梅林宏道氏(長崎大学核兵器廃絶研究センター前センター長、ピースデポ創設者、特別顧問)が、この構想の内容と朝鮮半島の非核化へ向けたこれまでの動きを講演。

現在、世界には7つの非核兵器地帯がある。南極条約、ラテンアメリカおよびカリブ地域(トラテロルコ条約)、南太平洋地域(ラロトンガ条約)、東南アジア地域(バンコク条約)、アフリカ地域(ベリンダバ条約)、中央アジア地域(セミパラチンスク条約)、モンゴル(国内法で非核兵器地帯地位を規定)などである。南半球ではすべての国々が上記のどれかの非核兵器地帯条約を締結している。

北半球の非核兵器地帯は少ないので、北東アジアでの創設は非常に意義深い。日本、韓国、北朝鮮が核兵器の開発、製造、実験、入手、保有、配備などを禁止し、これを監視および検証可能にする、また、中国やロシア、米国の核保有国が日本などの3ヵ国に対して核兵器による攻撃や威嚇をしないという内容の条約を作る構想である。「核の傘」を「非核の傘」に替えるという意味がある。

米国、解体核兵器のプルトニウムは希釈して処分

余剰プルトニウムの削減については、外務省の職員が日本政府の姿勢として明確に「削減」に言及した。「余剰プルトニウムを持たない」(※)というこれまでの基本姿勢からの前進と言える。福島原発事故によって、日本が国内外合わせて48トンも保有するプルトニウムが余剰の状態であることが明らかになった。加えて、余剰プルトニウムが確実に減少していく見通しは乏しく、内外の批判が集まっていた。原子力資料情報室は昨年2月にプルトニウムをめぐる国際シンポを東京で開催、さらに国会議員とともに米国議会へも働きかけ、余剰プルトニウムへの懸念や再処理に反対する声が多くあることを米国の議会や政策担当者らに伝えてきた。米国内でも余剰状態への懸念が高まっていたこととも相まって、そうした声が日本側に伝えられたに違いない。結果、日本政府は「保有するプルトニウムを削減する」ことを表明せざるを得なくなった。

とはいえ、政府の考える削減策とは、普通の原発でプルトニウムを燃料に使う「プルサーマルの推進」であり、その進捗に合わせて再処理量を調整するというものである。

これに対して、テキサス大学のアラン・クーパーマン教授は、プルサーマルは事故の危険、安全保障上のリスク、コストが高くつくことなどから、賢明な解決策ではないと指摘。また、英国への再処理委託で生じた21トンについては英国が引き取る可能性があり、そうするべきだと提案した。

48トンのうち約10トンは国内にあるが、うち半分はプルサーマルの対象にならない。そこでこれについて、米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」上級スタッフのエド・ライマン博士は核兵器に転用できない物質と混ぜて希釈・処分する方法を提案した。米国では解体核兵器から取り出されたプルトニウムをプルサーマルで使用する計画だったが、燃料製造工場の建設費が3倍以上になることから、昨年、建設は中止となった。代わりに上記の希釈法で今後40トンを処理する予定だと報告があった。

そもそもプルトニウムを取り出さないことが必要だ。六ヶ所再処理工場が稼働すれば、プルトニウムは増えていくことになる。このコストはウラン燃料の13倍に達するとの評価もあり消費者の負担は増えるばかりだ。日本が再処理を継続すれば、韓国は国内に再処理工場を建設する方向へと進むだろう。そうなれば、朝鮮半島の非核化はいっそう遠のくことになる。プルトニウム削減と朝鮮半島の非核化は密接に関連しているのだ。19年は韓国でシンポジウムを開催する。実りある議論を願っている。 

※日本政府は2003年に「利用目的のないプルトニウムを持たない」方針を表明したが、高速増殖原型炉「もんじゅ」がほぼ稼働しないまま廃炉となるなど、核燃料サイクルが行き詰まり、現実には余剰プルトニウムが増加。

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(2019年1月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 350号より)


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/








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