イタリアの流刑地ゴルゴーナ島で受刑者がつくる高級ワイン

イタリアの西海岸に浮かぶトスカーナ群島、その中でも最も小さなゴルゴーナ島。面積わずか2平方キロメートルほどのこの島には、二つの大きな特徴がある。海洋保護区であり、ヨーロッパ唯一の監獄島なのだ。島の海域は自由に航行できず、島に入るには、本土の港町リボルノから出航している週2便の定期船に乗り込まなければならない。 しかし乗客というと、トスカーナ諸島国立公園の自然ガイドが率いるハイキング客と、島のわずかな住人、そして刑務所を訪れる人々だけだ。


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1869年より、流刑地の役割を果たしてきたこの島だが、現在は刑期の最後の数年をこの島で過ごしたいと、受刑者自らが移送を希望する場所となっている。 その理由は、この刑務所の入り口に掲げられた看板に書かれた 「より良い人々を送り出す」にある。2012年より、名門ワイナリーであるフレスコバルディとこの島の刑務所が提携し、社会事業を始めたのだ。

フレスコバルディのブドウ畑は、港から丘の頂まで広がる森のなかにある。この農園で製造されるワインは、ボトル1本が数万円で取引される高級品だ。受刑者たちはフレスコバルディの農業専門家やワイン造りの専門家らと一緒に働きながら、ブドウ栽培、ワインづくりのスキルを身につけ、実務経験を積める。そのため、出所後の社会復帰が確実になる。実際、イタリアの再犯率は約70%にも上るのだが、ゴルゴーナ島を出所した受刑者の再犯率はほぼゼロだ。

島での生活は、朝6時半に起床し、昼まで働き、昼食を終えてから午後2〜4時まで働く。その後は、勉強などに使える自由時間だ。この島に来て2年になるダビデ(仮名)が、世話をしているヤギを見せてくれた*1。刑務所に送られることとなった自身の過ちを認めたうえで、本土の刑務所生活では描けなかった出所後の将来が見えてきたという。「海が荒れれば面会は中止になりますし、休みをもらえても一時帰宅もできません。でも、私はここで着実に、人生を立て直せています。」と語った。

*1 島では、約100人の受刑者が180頭の家畜の世話もしている。
参照:Gorgona: Italy’s last penal colony where 100 criminals care for 180 farm animals

参考:フレスコバルディとゴルゴーナ島刑務所の提携事業について 

By Andrea Cuminatto
Translated from Italian by Marilisa Dolci

Courtesy of Scarp de’ tenis / International Network of Street Papers

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“平成31年4月1日末現在、約4万1千人の受刑者等が、全国75の刑事施設(刑務所等)で木工、印刷、洋裁、金属、革工などの作業に就業し、職業的な技能の向上を図っています。”
CAPICサイトより
https://www.e-capic.jp/

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