※以下は2020/11/03に公開した記事を加筆・修正した記事です。
写真家ヘンリー・ハーグリーブスの作品「Ready for Dinner」
世界的に活躍する写真家ヘンリー・ハーグリーブスの作品に「食事の準備(Ready for Dinner)」というものがある(2015年発表)。災害が起きて慌てる人たちをよそに、万端な準備を誇る「プレッパー(Prepper)*」と呼ばれる人たちにフォーカスした作品だ。
*戦争や自然災害など“世界の終わり”に日頃から備えている人で、米国には約300万人以上いるとされている。2011-14年にはテレビシリーズ『プレッパーズ~世界滅亡に備える人々~』が放映された。
9.11テロ時に救急隊員を務めた経験あり。
「終末の時を具体的に想定し、備えている人々に興味を持ったんです」とハーグリーブス。「米国各地にいる“プレッパー”たちにコンタクトを取り、それぞれの“終末の献立”について聞かせてもらいました。住んでる地域、生活スタイル、信仰している宗教によって中身はさまざまでしたが、誰もが“その時は訪れる”と真剣に考えていました」
テロ攻撃に備えてユダヤ教の戒律に従った食べ物を備蓄していたユダヤ教徒、大きな竜巻の襲来に備えて低炭水化物の食事とインスリンを常備している糖尿病持ちの母と娘…..個々人の嗜好や栄養ニーズだけでなく、食品流通を揺るがしかねないさまざまな事態が地域・国家・世界レベルで反映されていた。
コロナ禍を受けて、ハーグリーブスは撮影したプレッパーたちの何人かにあらためて連絡を取り、新型コロナ危機に「備え」は役に立ったかを訊いた。
「十分な備蓄があるので全く心配に及びませんでした。備えがなかった人たちはそうではなかったようですね。仕事を失った人や生活が行き詰った人たちは、将来の生活をとても不安に感じています」
「全く心配ありませんでした。このための準備だったのですから」はっきりそう言う者もいた。
あいにく、新型コロナウイルスの影響はまだしばらく終わりそうにない。これらの写真を見て、今一度、自分の家に緊急時になくてはならないものを振り返ってみてはどうだろうか。
Ready for Dinner
https://henryhargreaves.com/Ready-for-dinner
撮影/ヘンリー・ハーグリーブス
By Whitley O’Connor
Courtesy of The Curbside Chronicle / INSP.ngo
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