(2013年3月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 211号より)




原発労働者の被曝防護は?廃炉に向けた作業、いよいよ本格化





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今、廃炉に向けて急ピッチで作業が進められている、福島第一原発。ここで働くAさん(40代男性)はこう語る。

「以前は作業員の中でも、全面マスクで仕事をすることへの不安があったり、『収束させるんだ』というような気持ちで中に入ったりと、それぞれに強い意識があって作業をしていたように思います。それが今は、時間が経ったからなのか、高濃度の汚染地域で仕事をしているという意識自体が作業員の間で薄らいでいるように思う」

Aさんは、原発事故の約半年後からサイト内で仕事に当たっている。「県外からたくさんの人が来て原発収束作業に当たっているのに、地元の人間が何もしないで見ているのはどうかな、と思ったんです」。家族や友人も避難生活を送っており、本当の意味での「原発収束」を目指すことが、サイト内で作業を続けるモチベーションになっているという。




放射線防護や危険手当などの補償は、今どうなっているのだろうか?

「一昨年とは別の会社に移ったのですが、会社によって給料が相当違うということがわかりました」。

前の会社は、日当、危険手当、線量に応じた被曝手当込みで1日2万円弱。現在は震災前から福島第一原発内で作業をしているプラント会社で働いており、1日2万5千円。ほぼ同じ作業をしているという。




労働者の被曝問題では以前、下請け会社が線量計に鉛のカバーをつけさせ、組織的に線量を低くするようにしていたことが報道され、労働者が守られていないことが大きな問題になった。現在はどうなっているのだろう?

「労働基準監督署が厳しくなっていて、会社も毎日のように安全意識の徹底に関するミーティングを開いています。そのために、どの会社も前よりも防護策が厳しくなっている。しかし、意外に思うかもしれませんが、安全対策が厳しくなっても、作業の長期化で働く側の危険意識が薄れてきている」

Aさんは今後、機械設備の作業に入る予定で、「まだまだ自分にはやれることがある、と思っています」と話す。




東京電力は昨年12月、2011年3月11日から昨年8月までに、福島第一原発サイト内で作業を行う労働者の累積線量は、99パーセントが100ミリシーベルト以下であり、97パーセントが50ミリシーベルト以下であると県に報告。大半の作業員が今後も作業を続けることが可能であるとした。県は、廃炉作業に伴う労働者の安全確保のため、双葉、浪江など関係13市町村による「廃炉安全監視協議会」を昨年12月に設置。2月5日には初めて現地調査をした。

今後の作業について、「今年は4号炉の使用済み燃料プールから燃料の取り出し作業の準備、秋には燃料プールの上に上がっての作業が予定されており、これが福島第一原発で最も大きな作業になるが、元請企業からは、工期を守るよう下請へのプレッシャーがかかっているようです。本格作業後の安全管理がどうなるか、気をつけていきたい」とAさんは話している。

(藍原寛子)