(2014年3月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 234号より)
事故から3年。帰還をめぐり、人々を分断する放射能
放射性廃棄物に悪戦苦闘しているのは東京電力だけではない。福島の原発事故で広く拡散した放射性物質により、山や川、農地や宅地が汚染された。これらを除染した後の廃棄物を持っていく場所が決まらない。
政府は30年間の中間貯蔵地として、福島第一原発と第二原発に隣接するように3ヵ所の候補地を国有化しようと、民主党政権時代から交渉を続けている。最近2ヵ所に絞る案が出てきたが、合意が得られていない。除染廃棄物の行き先が決まらないので逆に除染が進まない。
除染が進まないのには別の原因もある。強く汚染された所では除染しても人が住める状態にはならない。効果が上がっていないのだ。これらは福島県の話だが、汚染を受けた他県の自治体でも除染が進んでいない。
除染が進まないことから、避難生活が長引くことになる。福島県では今なお14万人を超える人々が避難生活を余儀なくされている。
長引く避難生活が家族に深い影を落としている。復興庁と飯舘村は、村民に対して毎年意向調査を実施している。飯舘村は事故の1ヵ月後に全村避難を指示された。調査の最新結果の速報が復興庁から1月31日に発表された。調査は昨年11月に行われ、調査対象は世帯代表者で3024世帯のうち約半分の1458世帯が回答した。70歳以上が最も多く、10年の区分ごとに割合が下がる。50歳以上が4分の3を占めている。避難で一つの世帯から高齢者と若年者が分散したという割合が半数だ。
帰還の意向に対する回答は、60代以降では帰還希望が約3割、「戻らないと決めている」割合は2割であるが、20代・30代では帰還希望が3〜4%なのに対して、戻らない割合は61〜68%と高い。40代でも46%が戻らないと決めている。この割合は年々増えていっている。戻らない理由の最多は「放射線量が低下せず不安だから」で73%に達する。年間20ミリシーベルト以下は安全とする政府の姿勢が受け入れられていないのだ。
事故から3年、早期帰村の政府方針とは裏腹に、放射能が人々をいっそう分断している姿が調査結果から見えてくる。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)