ホームレス状態にある方へのアウトリーチ:夜回り活動から見えてきたこと

夜回り活動から見えてきたこと

中村あずさ/「世界の医療団」東京プロジェクトコーディネーター 「夜回りを通じたホームレス当事者へのアウトリーチ活動」 路上生活にある方で特に精神や発達に障害がある方の安心の地域生活を目指し、調査研究、アウトリーチ、相談会、生活支援、リハビリプログラム、シェルター運営、政策提言などを行う。

26

中村:世界の医療団の中村と申します。私の方からは「ホームレス状態にある方へのアウトリーチ」というテーマでお話をさせていただきます。TENOHASI、べてぶくろ、訪問看護ステーションKAZOC(かぞっく)という団体と「東京プロジェクト」というプロジェクトを運営しており、主に障害を抱えた方への支援を行っています。

色々な活動をしていますが、今回は「炊き出し」と「夜回り」についてお話したいと思います。まず、アウトリーチとしては、ホームレス状態にある方に食事をお配りする「炊き出し」をしています。食事をお配りするというのは単に食事を配るだけではなく、顔を合わせること、安否確認すること、生活相談をすること、つながりを確認することといった意味があります。

13

たくさんの方がごはんを食べに来ます。池袋だと毎回200〜300人の方が集まります。ご飯を食べるというのは人間に共通していることなので、生活に困った方向けへの相談窓口に行かない方も集まってきます。その場に私たちの方から出向いて、敷居の低い場での声がけをして健康や生活の相談をしています。

もうひとつは「夜回り」です。夜21:30から毎週1〜2時間やっています。商店が閉まった時間帯に屋外で寝泊まりする人が集まってきます。そこでごはんとパンを配り、元ホームレスだった当事者、医療者、ソーシャルワーカーがチームで訪問します。チラシやおにぎり、パン、ホッカイロなどを配っています。これらを配ることで、それらが役に立つということもありますが、配るというツールを通して、相手を気遣う表現になったり、話をするきっかけづくりにもなります。

27

夜回りの目的としては、炊き出しにも来ない、来ることができない方へのアウトリーチです。女性の野宿者の方、病気の方、障害の重い方、路上生活が初めてという新しい方などがいらっしゃいます。自分たちから出かけていかないと会えない人たちとの出会い・支援のきっかけにしています。

08

もともとホームレス生活をしていた人たちが、アウトリーチに合わせてパン作りを行っています。自分たちの仲間に届けたいという思いで、アウトリーチにも参加しています。先週おにぎりを貰った人が、今回おにぎりを配っている、ということもあるなど、支援する側される側が柔軟に入れ替わる興味深い場でもあります。

27

夜回りについては10年以上、休みなくやっています。駅や公園で寝泊まりをしていると、手配師や詐欺師、貧困ビジネスの施設への勧誘など本当に様々な人たちが声をかけににきます。そんななかで「毎週この時間にやっているのはあの人たちだ」とわかっていただけるのは大きく、クチコミの力でホームレスの方々に知っていただけています。

わかりやすさ、親しみやすさ、安心も大切だと思っています。その人にとっての自然な環境で出会えるという、敷居の低さも良い点です。自分の殻に閉じこもり孤立している人に何らかの変化の刺激を与えられます。

駅はいろんな人がいるので、意外な出会いもあって、自分たちも楽しめるという、何らかの魅力もありますね。花粉の季節には辛いですが…(笑)

課題としては、毎週100〜200人という方々に会いますが、対応できる範囲や社会的資源に限界があることです。あとは若い人たちが増えていて、その方々への対応も課題です。ありがとうございました。

<part.4を読む>