(2014年5月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 239号より)
核保全サミットで 核保有量の最小化を約束。 注目される六ヶ所のゆくえ
核セキュリティサミット(核保全サミット)がオランダのハーグで3月24、25日に開催された。核保全サミットはオバマ米大統領の呼びかけで2010年から始まり、2年ごとに開催されてきた。今回のハーグ会合には世界の50ヵ国が参加した。
このサミットの目的は核を利用したテロリズムの脅威への対策を進めるためだ。対策の対象となる核物質は高濃縮ウランとプルトニウムだ。これらは核兵器の材料となりうる。それだけでなく、放射性物質も対象となる。通常の爆弾に混合して使用される恐れがあるからだ。対応策には大きく2つある。1つは、これ以上作り出さず、かつ、今ある量を減らすことであり、もう1つは核物質が奪われないように厳重に管理することだ。管理は物だけでは十分でなく、人も管理する。人権がないがしろにされることがあってはならないが、これが難しい。
日本では原子力施設で働く人の素性を確認する制度がない。原発の定期検査などでは2千人以上が働くが、下請け・孫請けといった日本独特の多重構造が素性確認を制度化できない原因だ。労働者保護のためにも多重構造をやめるべきだ。
ハーグサミットは25日に共同声明を発表した。今回の特徴は保有量を最小化することを打ち出したことだろう。これを率先して実施することを日本は表明した。これまで大学などで使用してきた高濃縮ウランは低濃縮ウランへと転換が進められてきた。今回はこれに加えて、日本原子力研究開発機構が高速臨界実験装置で使用していた高濃縮ウラン約200キログラムとプルトニウム約300キログラムを米国へ返還する。これは世界から歓迎されるはずだ。
「最小化」を公約通りに進めるなら、六ヶ所再処理工場の運転をとどまる必要がある。すでに日本は国内に9トン、海外に35トンのプルトニウムを保有している。これを減らすことが優先されるべきで、それをせずに本格運転へ入りプルトニウムを増やすことは国際公約とはほど遠く、批判を招くだろう。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)