新しい規制基準にない事故の時の災害対策 [原発ウォッチ!]

Genpatsu

(2013年8月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 220号より)

新しい規制基準にない事故の時の災害対策

7月8日に原発に関する新しい規制基準が施行された。昨年9月に発足した原子力規制委員会が大急ぎでまとめた基準だ。福島原発事故原因の詳細な調査が終わっていないので、なお不十分なところや従来のままのところがある。

施行に合わせて電力4社が10基の原発の再稼働を申請した。北海道、関西、四国、九州の4電力会社だ。九電は12日に2基の申請を追加した。審査は原子力規制庁の職員が3チームに分かれて行うという。

同型のものは2基1組で審査するので、12基の原発は7つのグループになると考えられる。審査は公開で行われ、最後は、規制委員会が審査結果を審議する。1グループの審査には半年程度かかると言われている。

厳正な審査を求めたいが、どうも心もとない。規制庁職員はほとんどが旧原子力安全・保安院から異動してきているからだ。旧保安院時代の彼らは電力会社の言いなりだった。国会福島原発事故調査委員会(黒川清委員長)がそう指摘している。

原発の耐震性はとりわけて重要だと考える。電力各社はこれまで断層を動かないものとしたり、距離を短くして影響を小さくしたりしてきた。この点、職員や委員が現場に出向いて厳しく調べ直してほしい。

そう思っていたら、日本原電が敦賀原発の再稼働を申請する予定と11日に発表した。原発の下を横切っている断層は活断層だと規制委員会が現地調査で判断した。にもかかわらず、原発の再稼働を申請するというのだ。経営を優先させず、安全を重視すべきだ。たとえば廃炉専門の会社に鞍替えすべきではないか。事故が起これば被害は市民に及ぶことを肝に銘じてほしい。

審査対象外の項目がある。原発事故が起きた場合の災害対策だ。避難計画の範囲は30キロメートルに拡大され、対象範囲が3倍の全国136市町村に広がった。避難計画がまだできていない自治体もある。数十万人を避難させられるのか実効性に疑問もある。ところが、規制委員会は原子力災害対策指針をつくっただけで、実際の計画づくりは自治体任せにしている。

事故が起きないように、起きた時には放射能が環境に出ないように、出た時には確実に住民を避難させる。これがあるべき規制体系のはずで、災害対策を審査から外すのは納得できない。

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)