[震災から3年] 除染や廃炉の仕事を求めてやってきた日雇い労働者たちの給料が、ピンハネされて1割しか手に渡っていないというケースも起きている

<part.2を読む>

路上生活者支援の草分け【NPO法人仙台夜まわりグループ

2000年から、仙台市内で路上生活者の自立支援を行っている。市内での路上生活者への訪問による昼・夜の安否確認のほか、炊き出し、食事会、相談会などを定期的に実施。緊急時には施設での居宅保護も行う。仙台の路上生活者支援の草分け的存在である。

路上生活者、全国で減少。しかし仙台では増加

厚生労働省の『ホームレスの実態に関する全国調査』によると、2014年1月に調査時点での全国の路上生活者数は7,508人と、昨年から757人減ったことが報告されている。この調査は日中に目視で数える調査方法のため、実数との差異があることが指摘されているが、その発表のなかでも、路上生活者数が増えた地域のひとつが宮城県だ。去年の調査では107人とされていたのが、今年は122人と15人増。そのうち仙台市内が119人だという。

「去年と比べても、夜まわりで見かける新しい人は増えているような気がします。ただし、いなくなるペースも速い。路上に出て、仕事に行って、仕事がなくなればまた路上に出てという繰り返しなんじゃないか。厚生労働省の調査はいつも真冬で、雪が降っていることが多いので、実数より少なくなるんだけど、これまでの経験からの感覚でいうと、実際は150人くらいはいるように思います。復興事業開始後は車上生活の人が増えたので、さらに数は多いはず」と理事長の今井誠二さんは考える。

夜まわりグループでは、2013年10月から「HELP!みやぎ 生活困窮者ほっとライン」という相談窓口をたちあげた。そこには、東北に仕事を求めてきて、さまざまな事情で働けなくなり、「住むところがないから助けて欲しい」という相談も来るという。

「南は奄美大島から北は北海道まで。除染や廃炉の仕事ならあるだろうとやってくるんです」と今井さん。相談のなかで、ある会社の給与明細を見せてもらったところ、15万円ほどの給与から食費や部屋代などがひかれて、手元には数千円しか残っていないというケースもあった。

「生活に困っている日雇い労働者が下請け業者や手配師たちからピンハネされているのは昔から変わらない構造なんだけど、除染などのために出されている危険手当なども全く本人の手に入らず、実際に出されている賃金の1割しか手に渡っていないという極端なケースも被災地では起きている」。

このほか、「HELP!みやぎ」には、DV、借金、住まいのことなど、さまざまな相談が寄せられる。

HELPみやぎ

「震災後、夜まわりグループへは、“ホームレス”状態にある人たちだけにとどまらず、広く生活に困窮している人からの相談が増加しています。相談者は、路上生活者と家のある人が半分くらい。生活困窮者自立支援法ができたけれど、おそらくその対象からもれてしまう人たちも出てくる。そういう人たちの駆け込み寺にしたいと思ってやっています。2013年10月に開設して3月末までで、累計257件の相談がありましたが、115件が継続相談中。つまり解決していない。それだけ、いろんな困難を抱えすぎている人が多いということ」。

駆け込み寺に「HELP! みやぎ」

今井さんは、さまざまな相談が集まる「HELP!みやぎ」をハブにして、就労、債務整理、居宅保護、医療保護などができるような駆け込み寺にしたいと構想を練っている。

「いまは、路上から定住先に移るまでの“中間的施設”として部屋の提供もしているけれど、中間的就労の場としての事業もつくりたい。これまでも元路上生活者の雇用創出を目的にしたリユース事業などをやってきましたが、リサイクル品のクリーニングや宅配弁当づくりなどの事業を通じて、生活習慣をつけたり、コミュニケーション力をつける訓練ができるといい。お金だけじゃなくて、仕事をしたくても高齢でできない人もいるので、生活を立て直したいと思っている人の部屋をいっしょに片付けたりとか、当事者同士で互助できるような場になるといいよね」

今井さんは、施設や市営住宅に入居しても、ちゃんとした食事をとる習慣がない人が多いことから、安否確認を兼ねた宅配弁当業などができないかと考えている。

「カロリーや栄養を計算したお弁当を届けながら、『どうしてる?』と、顔色や部屋の様子を確認する。顔色が悪かったら病院に連れて行き、部屋が汚かったらおそうじ隊を連れてこようかとかね。それが当事者の人たちの仕事になればいい。まだアイデア段階で、資金も必要だし、これから検討していくところなんだけど…」と今井さん。

生活困窮者自立支援法ができたが、行政による委託事業では、その支援が「成功」したかどうかを数字で問われる傾向があり、数になりにくい相談者がはじかれてしまう傾向が実際にあることを、今井さんは心配する。

「“継続相談中115件”が示すように、どこにもあてはまらない人がうちへ相談にくる。複雑な問題を抱えている人こそ、一人ひとりのニーズを汲んだ支援が必要です。そういう意味では、うちはうちで行政とは違う方向で必要とされている役割があるんだと思っています」