ロシア、ウラルやシベリアに使用済み核燃料廃棄。
ユーラシア大陸最大の河川、放射性物質で汚染。福島で核兵器や原発なき社会考える
原水爆禁止2014年世界大会・科学者集会イン福島が8月1日、福島市内で開かれた。当日は、「核兵器なき世界 原発なき社会」の実現に向けて、原水爆、原発などの核の問題や安全保障、科学者や専門家の姿勢について熱く語られた。
基調講演「核のブーメラン」は、ロシアの物理学者・生態学者で、NGO「グリーンワールド」社会運動家のオレグ・ボドロフさん。ボドロフさんはロシアでも、チェルノブイリ原発や東京電力福島第一原発の事故後、原発への否定的な評価が出たものの、新しい原子炉の建設が進んだと言う。
その背景には、ロシアに「原子力ムラ」である国営企業「ロスアトム」があり、拠点となる20の原子力都市は、情報公開、市場競争に関して閉鎖的であること。核兵器や原発関連事業に従事する労働者は、ロシア国民の平均賃金の2〜3倍の賃金を得ていることを説明。「ロシアは原発で作った電力をヨーロッパに売りつけ、その一方で、原発で生じた使用済み核燃料をウラルやシベリアに廃棄。ユーラシア大陸最大のエニセイ川は放射性物質で汚染されてしまった」。核軍事施設や原発の周辺住民への影響が起きていると話した。
会場からは、「市民運動で放射能の測定を進めては」との提案があり、ボドロフさんは「とても大切な意見。測定器の配置と同時に、地域の人々が測定の意味を知り、原子力ムラに依拠することなく実態を解明していくことが重要」と答えた。
「核兵器の廃絶を目指す日本法律家協会」事務局長の大久保賢一弁護士は、1963年の原爆裁判と原爆症認定集団訴訟、今年5月に大飯原発の運転差し止めを認めた福井地裁の判決から、司法が核に対してどのような判断をしたかを、以下のように報告した。
「司法は、原爆の熱線や爆風、直接放射線の被害に加え、残留放射線や低線量内部被曝の危険性、人体への悪影響を認めた。被害を認定し、人道や正義に裏打ちされた法を適用している」「裁判所は政府の放射線被害の把握は不十分だとしている。人類は放射線をコントロールする十分な知識も技術も持ち合わせていないどころか、低線量内部被曝の影響も解明できていない。核エネルギーと人類は共存しえない」
(文と写真 藍原寛子)
(2014年8月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 246号より)
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