有志による路上生活の応援【坂総合病院・事務局次長 神倉功さんのお話】
仙台のベッドタウンでもある港町・塩釜にある「財団法人宮城厚生協会 坂総合病院」。その事務局次長を務める神倉功さんは、病院内の有志による路上生活者支援に取り組んできた。
また、『仙台夜まわりグループ』の支援にも参加、病院としても年1回の無料検診などの協力を行っている。
無料低額診療の取り組み
レポート(1)で紹介したNPO法人POSSEによる、仙台市宮城野区の応急仮設住宅に入居する40世帯を対象に行った生活実態調査でも、震災後に健康状態が「悪化」「やや悪化」したと回答した世帯が67.5%を占める一方で、2013年3月に医療費減免制度が一旦終了した際には、「通院の頻度を減らした」世帯が8世帯、食費や公共料金など「他にかかる費用を減らした」世帯も9世帯にのぼっている。
病院までの交通費も負担となり、生活困窮によって必要な医療へのアクセスが妨げられる状況が起きている。そこで今回は、坂総合病院での生活困窮者や無保険者が受診した場合の対応について話をうかがった。
「宮城県民主医療機関連合会(民医連)に加盟する坂総合病院では、『無料低額診療事業』を実施しています。これは、失業中、ホームレス、ネットカフェ難民、DV被害者など、生活に困窮した人の医療費自己負担を無料または低額にする制度で、都道府県の認可を受けた医療機関が実施しているものです。
宮城県では、震災後に被災者対象の医療費減免制度を行っていましたが、2013年3月に一旦終了(※)したため、その際にはこの制度を利用した被災者も少なからずいました。また、昨年から坂総合病院では、他県から復興関係の仕事で来ていると思われる無保険者の受診が続いていて、この制度が活用されるケースもありました」と神倉さん。
※2014年度からは、所得制限などの条件つきで医療費減免制度が復活している。
坂総合病院では相談室に5人のケースワーカーがいて、医療費の支払いが難しい場合や無保険の受診者が来た場合には、事情を聞いたうえで対応を行っている。
ケースワーカ―の佐藤健太郎さんによると、「まずその人が医療費が払えない生活状況なのか、必要性を感じなくて払ってこなかったのかによって対応が変わってきます。後者であれば保険の必要性について説明をすることから始まります。無保険のままで、もし大きな病気で手術にでもなれば、とても全額負担できません。無保険というのは、リスクが大きい状況なのです。そこで役所に行き未納分を追納する形で、まずは3か月や6か月の短期保険証を出してもらって3割負担分を払ってもらいます」
しかし、3割負担分でも支払が難しい生活状況の場合には、病院の所得基準にあわせて、無料低額診療制度を使うことになる。無料や低額にした分の医療費は病院が負担する。この制度はそれほど知られていないが、被災地に限らず全国で行われている。
ただし、この制度は生活保護の受給開始など、生活が改善するまでの一時的な措置という位置づけなので、6か月までという期限がある。
さらに、院外処方である薬には原則として適用されない。坂総合病院ではケースワーカーが6か月たった時点で面談を行い、その人の生活状況を把握しながら、必要に応じて措置の更新、他制度との組み合わせなど、適切な制度やサービスに結び付けるよう取り組んでいる。