空き家をリノベーション。大学生と地域を結ぶコミュニティスペース「0号館プロジェクト」(小林泰士)

ビッグイシューオンライン編集部の小林です。近年「空き屋活用」の動きが盛り上がりを見せており、このビッグイシューオンラインでも、空き屋活用に関する動きを何度か紹介をしています。

  • 0号館プロジェクト」の三橋純香さんにお話をお伺いしました。学生が中心となって進める先進的事例、ぜひご注目ください。


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    (「0号館プロジェクト」のメンバー4人、左から2番目が三橋さん)

    地域の人と大学生をつなげるコミュニティスペース

    小林:「0号館プロジェクト」の概要を教えて下さい。

    三橋:古民家をリノベーションしたコミュニティスペースを作り、大学生と地域の人たちのつながりをつくることを目的に、このプロジェクトを行っています。

    高崎経済大学は高崎駅からの距離も遠く高崎市の中心地から離れています。そのため、大学内で交友関係が完結してる人が多くいます

    私は高校時代、東京に住んでいて、たくさんの夢や想いを持って活動をしている大人との出会いがありました。しかし、大学進学を機に高崎に来てから、そのような場所が少ないことに気付きました。

    高崎にも、大学の外にはすばらしい活動をしている大人たちがいます。学生たちが、そんな方々と出会うことができる場所を大学の近くに作りたいと思い、この活動を行っています。

    小林:このプロジェクトはどういう経緯でスタートしたのでしょうか?

    三橋:2年前にNHKの「東北発☆未来塾」という番組に出演していて、その時に考えたビジネスプランをもとにして現在実行しています。ビジネスプランのみで、実行することまではできていなかったので、大学などで学んだことのアウトプットとして、改めて昨年の4月20日に活動を始めました。このビジネスプラン自体は、高校の頃によく行っていた、渋谷の「残響塾」というコミュニティスペースを参考にしています。

    空き屋を使って欲しい人と使いたい人のマッチング

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    (昔住んでいたおじいちゃんとメンバー)

    小林:「0号館」は空き屋を利用していますが、どのようにこの物件を見つけたのでしょうか?

    三橋:「東北発未来塾」でプロジェクトを考えた時に、大学の近くにいい空き屋を見つけることはできたんです。けれど、その空き屋の所有者がなかなかわからなくて…。市役所に行ったり近所に住んでいる人に話を聞いてみたりしたのですが、結局所有者を見つけることはできずプロジェクトを始めることはできませんでした。

    それからも継続的に空き屋は探していて、今回の物件と出会うことができました。この空き屋の持ち主の方は、物件の裏で無料の学習塾も行っている方で、もともと「この空き屋を活用して大学生に何かをしてほしい」と考えていたようで、スムーズに話を進めることができました。

    たぶん、今回のように「所有している空き屋を活用して、若者に何かをしてほしい」と思っている人は他にもたくさんいると思うんです。「空き屋を活用したい」と考えている人とのマッチングができるようになれば、もっと空き屋活用は進んでいくと思います。

    小林:空き屋を実際にリノベーションしていったわけですが、よかったこと、大変なことは何かありますか?

    三橋:リノベーションを進めていくなかで、そこに住んでいた人のストーリーに触れる機会がたくさんありました。大家さんや近所の方から、大学ができる前の時代の話を伺ったりと、これまでなかったご近所付き合いが生まれたのはよかったですね。

    一方で「0号館」は築100年の古民家なので、水道などのインフラが十分に整っていませんでした。リノベーション以前の下準備が大変だったのは予想外でした。

    地域の魅力に気づく場所「0号館」

    小林:今後「0号館」をどのような場所にしていく予定ですか?

    三橋:地域と大学がつながれる場にしていきたいです。前橋には「シェアフラット馬場川」という、空き店舗を活用した学生が住むシェアハウスがあります。こちらは「地域に学生を呼び込む」活動ですが、「学生の場に地域の人を呼び込む」ということにも挑戦したいと考えています。

    小林:具体的に、どのような活動を行っていくのでしょうか?

    三橋:「貸し会議室」「イベント」「移動販売」「貸しキッチン」の4つを軸に活動を行っていく予定です。

    大学生にとっては、学校に足りていない点を補完できる場所にしたいと考えています。たとえば高崎経済大学は図書館が9時半に閉まってしまうんです。なので、それ以降の時間帯では、学生が話し合いをすることができる場所が少ないんです。自分のライフスタイルに合わせて「0号館」を活用していって欲しいと考えています。

    地域の人にとっては、学生とのつながりを作り、街の魅力に触れることができる場所にしたいと考えています。「0号館」には常に学生がいます。そこに地域から様々な人が集まり、魅力がどんどん集まっていく。そこからさらに、学生が地域の魅力に気づいて、大学から地域に出ていく…という循環を作り出したいと思っています。

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    (2階はかつて蚕室でした)

    小林:0号館プロジェクトの活動を通してのビジョンを教えてください。

    三橋:「0号館」という地域と繋がる空間が、学生のライフスタイルの一部になってほしいです。そして、0号館で過ごした時間がきっかけとなって、卒業したあとも、この地域に自分の成長を還元しつづけてほしいです。そういった循環が、群馬の魅力をさらに豊かにしてくれる気がします。

    小林:三橋さん、ありがとうございました。

    もっと詳しく:関連サイト

    群馬)空き家を交流拠点に 高崎経済大生、寄付呼びかけ:朝日新聞デジタル

    0号館のオープン予定は4月6日。2月末には改修工事は終了する予定です。正式なオープン前にもイベントなどを行う予定なので、高崎市の近くにお住まいの方はぜひ「0号館」に足を運んでみて下さい。