様々な社会的背景・困難を抱えた人たちを対象にしたフットサル大会「ダイバーシティカップ」の第二回報告書より抜粋をお届けします。(インデックスはこちら)
千葉県内で、精神障がい者や引きこもり、不登校者などを対象にフットボールを通じた支援活動をしている、千葉『共に暮らす』フットボール協会。ダイバーシティカップに参加した3名のメンバーに感想を聞きました。
当事者・支援者の垣根を超えたフットボール
-ダイバーシティカップに参加した経緯について教えてください。
(山田さん)第1回ダイバーシティカップに参加した「オムハビユナイテッド」のメンバーに大会のことを紹介してもらいました。自分たちのチームは、千葉『共に暮らす』フットボール協会【以下:トモフト】といって、うつ病などの精神疾患の当事者チームであるオムハビユナイテッドとは、精神障がい者のフットサル大会で交流したことがあったんです。ダイバーシティカップの話を聞いたときに、トモフトと目指していることが近い!と感じました。どんな人たちと出会えるのだろうとワクワクした気持ちで参加を決めました。
-「トモフト」はどんなチームなのでしょうか。
(佐々さん)もともとは千葉県内に精神障がいのフットサル大会があり、そこにチーム参加や運営といった形で関わっていたのですが、精神障がいをもった人同士の交流だけでなく、フットサルを通じてより多くの人と交流できたらと立ちあがった団体です。今年は「オープンリーグ交流会2016」というものを開催し、精神障がいの有無にかかわらず100名ほどの人が参加し、ミックスチームを作ってチーム名や目標を決めてゲームをして交流するといった場を開催しました。
(山田さん)僕自身、以前統合失調症を患っていて、ほとんど歩けない状態だった時期があるんです。でも、デイケアの施設でフットサルのプログラムを紹介してもらい、身体を動かし、人と関わる中で、心身の健康を取り戻していきました。今は、毎週フットサルをしていてトモフトの運営や一般の人や当事者どなたも参加出来る練習会を開催しています。トモフトには、自分のように当事者から支援者になったかたや、医療者や若者支援の人など自由な感じでやっているのが特徴です。
-ダイバーシティカップに参加してみてどうでしたか。
(降屋さん)本当に楽しかったです!トモフトが主催してきた精神障がい者大会では大人しい方が多いんです。大会としてはちょっと静かすぎるかなと。そもそも精神保健福祉の分野は支援者自体がシャイで人付き合い苦手な方が多いんですよね(笑)
ダイバーシティはそれぞれのチームに特徴があって、また、そこに関わる方達もとても明るい方が多くて言葉の通り多様な人と出会えて楽しかったです。
(佐々さん)自分は精神科の医師をしているので、仕事柄、精神障がい者への偏見といったものを社会の中で感じることが多くあります。でも、ダイバーシティカップに来ているチームの背景を見てみると似た構図があるなと感じました。そして背景は違ってもなぜかフットボールがそこにあって楽しんでいる。その縁で今回さまざまな背景を持ちながらつながることができて、フットボールの偉大さを実感しました。また、今まで自分は「精神障がいと社会」といった考えでしたけど、もっと幅広く「何らかの理由で生きづらさを感じている人と社会」についてかんがえないとなーと思いました。個人的には、最後のゲームでキーパーと1対1だったんですけど、シュートを外しちゃって・・その感覚やシーンって鮮明に覚えていています、本当に悔しいです。
(山田さん)ええ、佐々さんの最後のシュートシーンが、僕の脳裏にも残っています(笑)
(降屋さん)僕は交流会のあとのミックスゲームにも参加して、誰が誰だが分からない状態でボールを蹴ったのですがチーム対抗戦とは違った楽しさがありました。30分ノンストップでボールを蹴って2得点1アシスト。翌日から3日間筋肉痛で本当に厳しかったです(笑)みんな自然な感じで打ち解けていました。ゲームの後、連絡先を交換した文化学習蹴球団(しゅうきゅうだん)さんは、同じ総武線沿線で私が本業で関わっている「サポートステーション事業」を受託しているという共通点がありました。横のつながりも大切にしたいので今度は総武線カップなどしたいですね。
(山田さん)すごく楽しかったです。フットサルをする時は病気とか関係ないし、あれだけフットサルを一緒に楽しめたら、フットサルを超えて、仕事することだったり、他の様々なことをみんなで共有し、新しい社会を創造できそうです。
楽しいことで自然と動ける
-今後の「トモフト」の目標は?
(降屋さん)僕は大会や交流会だけでなく、日常的に出張フットサルっていうのをやりたいと思っているんです。自分自身フットサルをやることで人生がいきいきとしてきた経験があります。もしデイケア施設等で人数が集まっていないとこがあれば、精神障がいを抱えた当事者プレーヤーを派遣、場合によってはコーチ役を務めてもらったりする事で、フットサルができる環境や当事者がチャレンジできる可能性も広げていきたいです。
(佐々さん)最初来た時は全く喋らなかった人でも、今ではチームを仕切っていたり、人間って変化するんだということを実感しています。そういう一つの場としてサッカーを使いたいですね。あと、みんながサッカーできるわけではないので、例えば音楽やデザインとか、一緒に混じって、音楽部とか美術部とか、いろんなパートが集まったらおもしろいですよね。障害の有無じゃなくて、好きなことを軸にしていろんな人が入ってくコミュニティができたら良いなと思っています。
(山田さん)楽しい場を作りたいですね、楽しいと頑張らなくても自然と動けるということを実体験として持っているので、そういう場をいろんな人に体験して欲しいです。
千葉『共に暮らす』フットボール協会
https://tomofuto.org/
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第2回ダイバーシティカップ報告書(PDF版)
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