震災・原発事故からこの3月で8年目。
2018年3月1日発売の『ビッグイシュー日本版』330号では、特集「8年目の福島――ふくしまの8人」として、福島在住のジャーナリストが8人のふくしまの人々を紹介する。
この記事では読みどころとして1名のエピソードをピックアップ。
廃園になった幼稚園に地域図書館が。地域の寄り合いの場に
『ビッグイシュー日本版』はこれまでにも、図書館の持つ力を何度か特集してきた(304号、327号など)。会津坂下町では2015年9月に、廃園になった幼稚園を利用して、地域図書館「ふくしま本の森」を市民が運営している。
震災後に全国から寄せられた30万冊のうち4万冊を貸し出す。返却期限もなく、読むなら又貸しOK という、みんなでルールを決めたユニークな図書館だ。貸し出しだけでなく、寄贈本の整理、ブックトーク、近隣のフィールドワークなど活動が広がり、地域の寄り合いの場になっている。
発起人代表の遠藤由美子さん(奥会津書房代表、三島町在住、68歳)は、この場所を「〝知と出会いの入会地(いりあいち)”にしたかった」のだという。
遠藤さんの語る震災があったからこその気づき、地域の英知が結集したというエピソードは、「この状況に置かれたのがもしも自分だったなら、何ができただろうか?」「今自分の置かれた状況で、自分はベストといえる選択ができているか」といった問いかけとなり、自分を奮い立たせてくれる。
ふくしま本の森 〒969-6584 福島県河沼郡会津坂下町塔寺字松原2922-1 Tel.0242-85-7680 Fax.0242-85-7690
メール:honnomori@eos.ocn.ne.jp ホームページ:hon-mori.d.dooo.jp/
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『ビッグイシュー日本版』330号の特集で紹介しているのは以下の8編。
1.きらきらひかる森――オリーブのこと
2.“原発に抱いた愚かな幻”を教訓に――原発標語のこと
3.記録しなければ記憶されない――震災冊子のこと
4.いつか桜並木の下で焼きたい――焼鳥屋のこと
5.自分のなかの火が消えないように――芝居「天福ノ島」のこと
6.知と交流の入会地を築く――暮らすということ
7.激しい怒りを覚えるような時も「心にほほえみを」――生きるということ
8.福島で何が起きたのかずっと語り続ける――帰還困難区域のこと
印象深いのは
『福島を忘れない』という言葉には違和感があります。
『忘れない』というのは『すでに終わったこと』というのが前提にあるから。
でも福島は終わっていない。『福島を思う、福島を見つめる』の方が良い
と「帰還困難区域のこと」で話してくれた菅野さん。
福島に住んでいる人たちは、原発事故をきっかけに何が変わり、何を大切に生活しているのか。彼らが「この7年間の間に大切にしてきたこと」とは、原発の影響を直接受けていない人々にも、日々の生活で何を大切にすべきなのかというヒントを与えてくれる。
多くの犠牲者を出し、今も苦しむ人の多い震災と原発事故を振り返る意味とは、「あの震災や原発事故があったからこそ、私たちは大切にすべきものをここだと定められるようになれた」と言えるようになることではないだろうか。
ビッグイシュー330号ではこのほかにも、
・スペシャルインタビュー:女優 田中麗奈さん
・リレーインタビュー。私の分岐点:映画監督 安藤桃子さん(前号329号、お母さまの安藤和津さんからのリレーバトンです!)
・国際1:再ホームレス化は40分の1に。低所得者向け住宅を魅力的に模様替え
・国際2:持続可能なトイレを通して途上国での衛生環境向上をめざす社会的企業ゴルデイマー
・ワンダフル・ライフ:号外研究家 小林宗之さん
・ホームレス人生相談:20代女性からの「人前で話すことや自己紹介が苦手です」のご相談。
など盛りだくさんです。
ビッグイシュー日本版はずっと東日本大震災に心を寄せています
東日本大震災以降、徐々に他のメディアの報道が減少するなか、ビッグイシュー日本版は、毎月1日号では「被災地から」のコーナーで、被災地のその後を、また毎月15日号では「原発ウォッチ」のコーナーで原発問題のその後を継続的に扱っています。
そして、毎年震災のあった3月頃には東日本大震災のその後の活動、問題、対策、ニュースやエピソードについてスペシャル企画や特集を組んできました。
2012年3月1日発売186号
特集「厳寒の三陸岩手、雨宮処凛さんと行く」
https://www.bigissue.jp/backnumber/186
2013年3月1日発売210号
特集「動く大地を生きる」(防災)
https://www.bigissue.jp/backnumber/210
2014年3月1日発売234号
特集:温、魅、質。被災地、女性の仕事づくり
https://www.bigissue.jp/backnumber/234
2014年3月15日発売235号
特集:いのちの時間
https://www.bigissue.jp/backnumber/235
2015年3月1日発売258号
特集:5年目のふくしま
https://www.bigissue.jp/backnumber/258
2016年3月1日発売282号
特集:住民の元気。6年目の被災地
https://www.bigissue.jp/backnumber/282
2017年3月1日発売306号
特集:7年目の福島 帰りますか
https://www.bigissue.jp/backnumber/306
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