泊原発の敷地内に活断層!? 地震、津波、火山噴火。再稼働目指すも課題山積

北海道電力・泊原発1~3号機が停止して10年になる。3号機は電気出力91.2万kwの性能で、2009年12月22日に営業運転を開始した。紆余曲折があったものの11年の東北地方太平洋沖地震後も運転を継続し、12年5月6日に定期検査で停止した。その後、原子力規制委員会が発足し、新規制基準に従って再稼働申請を行ったのが13年7月8日。新基準の施行日だった。

活断層の存在を否定する北電

耐震に詳しい人材も不足か!?

泊発電所は北海道積丹半島の南側付け根付近に位置している。この地域は海成段丘の発達したところで、審査では、敷地内を走る断層が12万年前に海岸だった段丘を横切っているかどうかが問題となった。地質学者らが活断層だと主張するも、北海道電力はその地層に含まれている岩石がより古い時代のものであり規制基準に抵触しないと主張して、活断層であることを否定し続けた。厳しい議論が続いたが、最終的に規制委員会は北電に主張の補強を求めた上で、21年7月にこれを受け入れた。その後本格的な審査が始まったものの、審査は遅々として進まない状態だ。

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 22年3月31日の規制委員会の議論では、耐震安全性の基となる基準地震動が未策定、洞爺カルデラなど火山噴火による影響評価や津波対策など、課題山積であることが明らかになった。

 審査がなかなか進まないことに触れて、更田豊志規制委員長は4月12日に行われた北電経営陣との意見交換の場で、「自社に地震・津波・火山の専門的議論に応じられる人材を抱えていただきたい。審査のやりとりに十分な対応がこれまで見られなかった」と厳しく迫った。更田委員長は20年12月の会合でも同様の指摘をしていた。報道によれば、北電は審査の説明の終了時期を23年8月としている(日本経済新聞3月4日付)。はたして先行きは不透明だ。

追加対策費用は2000億円以上
テロの標的になるリスクも

 仮にその通りに進んだとして、その後、審査を反映した変更申請を行い、規制委員会がこれを承認すれば、一般からの意見募集を行った上で、審査合格証が交付されることになる。

 さらに、これを反映した追加的な安全対策工事のための許認可と工事実施へと進み、完了後に最終的な検査を受ける。テロ対処施設の新設も必要なため、再稼働は相当先になりそうだ。

 ところで、北電は泊原発の防潮堤の撤去工事を今年の3月1日から始めた。福島原発事故を受けて設置した長さ1.25km・高さ15mの防潮堤(14年12月完成)が、地震時の液状化で壊れる恐れがあると規制委で指摘されたからだ。撤去工事は10ヵ月かかる予定だ。その後、新たな防潮堤が設置されることになるが、完成時期や費用については発表されていない。原子力安全・保安院時代に、十分検討をせず建設した結果といえる。

 北電は今年1月の報道各社アンケートに、追加的な安全対策費用を「2000億円台半ば」と曖昧に回答。再稼働申請時の900億円からすでに2倍以上に膨らんでおり、テロ対処施設の建設など、費用はさらに増えるだろう。

 再稼働するために必要な最後の手続きは、「自治体からの同意」である。従来の4町村に加え周辺9町村のうち6町村が同意権の拡大を求めている。この行方は見えないが、北電が前途多難であることがわかる。

 再稼働と再エネの両立を経営の柱に据えている北電だが、原発は厄介な使用済み燃料が出る上、軍事やテロの標的になるリスクがロシアのウクライナ侵攻で明らかになった。北海道は再エネに適した地域である。経営方針を転換すべきだ。
(伴 英幸)

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(2022年6月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 432号より)

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけに、脱原発の市民運動などにかかわる。著書に『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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