“地域の一員”同士、支え合う関係築く「コミュニティ・フリッジ」

街中に設置され、誰でも食べものを寄付したり受け取ることができる“地域の冷蔵庫”が各国で広がっている。4人に1人が日々の食料に困っているという米国デンバーで、地元ストリート誌が取材した。

 米国中部コロラド州・デンバーにあるカフェ「Mutiny Information Café」のそばを歩けば、カラフルな冷蔵庫が目に入ってくる。誰でも中を開けて食料を取ることができる「コミュニティ・フリッジ(地域の冷蔵庫)」だ。筆者が佇む間にも、焼きたてのパン1斤を手にした女性と男性がやって来て、「まだ温かいですよ!」と周りに声をかけながら冷蔵庫に入れた。

 2020年12月、同カフェのジム・ノリスは多少の不安を抱きつつ、コミュニティ・フリッジの設置を決めた。しかし、2ヵ月の試用期間を終えた今では喜びでいっぱいだという。「コミュニティ・フリッジは、食料を寄付する人たちに自分が地域の一員であるという感覚を持たせてくれます。食べものを入れるという自分の行動が他の人にもたらす影響を、すぐ目にすることができるからです」。その上、食料廃棄を減らすことにも貢献できるのだ。

▲Mutiny Information Caféの前にある冷蔵庫。隣には衛生用品なども Photos: Paula Bard

 デンバー州公衆衛生環境局の推計によると、州人口のうち日常的に食料困窮に陥っている人は4人に1人。コロナ以前と比べれば、2倍以上に増えたという。デンバーに住んで20年のノリスは「地域の人たちにしっかり食事をとってもらうことは、地域の安全にもつながる。それを自分たちでできるのです」と語る。

「路上に横たわっていた人の顔色が良くなっていくのがわかるんです。家のある人と同じようなものを食べることで、尊厳を取り戻すこともできるでしょう。食事は、誰もができる一番シンプルな“人間らしい行い”なのです」

 その後、デンバーのコミュニティ・フリッジは6つに増えた。その一つを設置したコロラド大学の大学院生エリ・ゼインはこう話す。「チャンスさえあれば、地域を支えるために一歩踏み出そうとする人はたくさんいる」

 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、米国に初めてコミュニティ・フリッジが登場したのはブルックリンで、2020年2月のこと。約25%の人が日々の食事に困っているといわれるベッドスタイ地区で、地域団体「In Our Hearts」によって設置された。同団体代表のサデウス・アンプスターは言う。「この取り組みによって私たちが築こうとしているのは、従来とは異なる相互扶助の関係です。権力や特権をもつ人からの施しではなく、人々が対等に支え合う関係を目指しています」

▲デンバー市内のネイルサロンやカフェの店頭に設置された冷蔵庫 Photos: Paula Bard

 世界に広がるコミュニティ・フリッジの動向を追い、設置したい人向けの情報提供を行うウェブサイト「フリージ(Freedge)」もある。コロナ禍でますます悪化する食の貧困。地域のための冷蔵庫は、欧米各国のほか南米や中東、中国、インド、タイ、日本(※)などで急速に浸透している。
(Paula Bard, Denver VOICE/INSP/編集部)

(脚注)
※ 2020年11月に設置された岡山県の「北長瀬コミュニティ・フリッジ」は駅前の施設内にあり、登録者が24時間利用できる。食料寄付者も登録制で、個人や商店、企業が提供している。

※この記事は2021-05-01発売の『ビッグイシュー日本版』406号から転載しました。

※日本でも各地でコミュニティフリッジが展開。以下は2022年にできた大阪府・堺市南区の泉北コミュニティフリッジ。(2022年5月撮影)

日本各地のコミュニティフリッジ一覧((一社)北長瀬エリアマネジメントのサイトより)
https://communityfridge.jp/network

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