2026年6月17~21日、アジア・太平洋の反原発運動グループが交流する「ノーニュークス・アジア・フォーラム(NNAF)」がフィリピンで開催され、フィリピンはもちろん、台湾、韓国、インド、オーストラリア、日本などから多くの市民が参加した。NNAFは1993年の日本を皮切りに、おおむね1、2年おきに各国持ち回りで開催され、今回は22回目となる。
台湾にも原発再稼働の動き
各国の反原発運動の課題を共有
NNAFでは各国の反原発運動が抱える課題が共有されたが、いずれの国でも急速な原発推進政策とそのひずみが主要な問題となっている。脱原発へと舵を切ったはずの台湾でさえ放射性廃棄物の処理が問題となっており、さらに最南部の第三原発の再稼働の動きがある。昨年の総選挙で原発導入を否定したオーストラリアでも原子力潜水艦導入の動きが進んでいる。取りまとめられた声明では平和で持続可能な世界には原発が必要ないことが再確認された。
フィリピンには、1984年に完成したものの一度も運転したことのないバターン原発(PWR、62万kW)が存在する。マニラから直線距離で70kmの位置にあるこの原発は、汚職と腐敗にまみれていた当時のマルコス政権の象徴となり、85年には多数の市民が一斉にストライキに入り、デモに参加する「ウェルガン・バヤン(国民的ストライキ)」が行われた。これは市民の力でマルコス政権を倒した86年の「エドゥサ革命」の重要な背景となった。同年チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故が発生、バターン原発は稼働することなく40年以上の時が経った。
フィリピン、進む原発建設計画
モロン市は非核地帯条例承認へ
フィリピンは日本と同様、環太平洋火山帯に位置しており、多くの地震に見舞われている。加えて熱帯モンスーン気候で、しばしば大きな台風が直撃する。そのように自然環境が厳しい国でありながら、フィリピンでは今、バターン原発の稼働を含め、多くの原発計画が提案されている。6月8日にM7.8の大地震が発生したばかりの最南部ジェネラル・サントスでさえも、建設候補地として名前が挙がっているのだ。
今回、私たちは、バターン原発正門前と1607年に創建された「柱の聖母教会」で集会を行った。教会では長年地元で反対運動をけん引してきた人々の話を聞いたが、一方的な進め方、情報の少なさや偏りなど、国は違えど、地元の方々の抱える問題は似ていることを改めて感じた。

集会終了後、バターン原発のあるモロン市街で1時間ほどパレードを行った。パレードはサウンドカーやドラム隊が参加する、にぎやかで明るい雰囲気のなかで行われた。住宅や路上から手を振る人々も多く、地元の原発反対の意思を感じさせるものだった。ドラム隊はダンサブルなリズムで日本のパレードでも導入すると楽しいのではないかと思った。また、主催したフィリピンの運動体は若い活動家が多かったからか、NNAF全体が終始明るい雰囲気で行われたことも印象的だった。
フォーラム終了後の6月22日、モロン市が「非核地帯条例(Non-Nuclear Zone Ordinance)」を最終承認したという朗報が入った。この条例では、モロン市全域を非核地帯と位置づけ、原子力発電施設の建設・運転や放射性物質の保管などが禁止されるという。多くの市民の粘り強い活動が実を結んだといえる。
(松久保肇)
まつくぼ・はじめ
1979年、兵庫県生まれ。原子力資料情報室事務局長。
金融機関勤務を経て、2012年から原子力資料情報室スタッフ。共著に『検証 福島第一原発事故』(七つ森書館)、『原発災害・避難年表』(すいれん舎)など https://cnic.jp/
※この記事は『ビッグイシュー日本版』532号から転載しました。
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