<part2を読む>
エコアパートは持続可能な暮らしのモデルケース
この「顔の見える」地域づくりは、平田さんが6年ほど取り組んできた環境活動「コミュニティガーデン」から発想したものだという。コミュニティガーデンは、土地の再開発によって生まれる多くの空地を活用し、花、野菜などを植え、地域住民が一緒に管理することで地域の結びつきをつくる活動。この活動は、単に農業の生産活動の場としてだけでなく、孤立した住民同士で起こる犯罪の防止や、少子高齢化で増える老人の居場所づくりとしても効果的だと、平田さんは考えている。
「コミュニティガーデンでは、緑を媒介にして、いろいろな人に出会えます。そこは、ローカルな場所と自分の知らない人・世界をつなぐゲートみたいなもの」と説明する。
平田さんが長年取り組んできた緑を通してのコミュニティづくりは、今、畑つきエコアパートという形で実現しているといえる。
エコアパートには木の机とイスが置かれた、共有スペースがあり、憩いの時間を演出している。採れたてのイチジクや冬瓜の煮物、自家製のゴーヤジュースを囲んで、住人の方々、平田さんご夫婦とご両親は仲良くくつろいでいた。近所の方やコミュニティガーデンで出会った人たちも、居心地がよいからとたびたびここを訪れるそうだ。
アパートの家賃は12万3千円。現在、30代の夫婦3組とシングル1組が入居中だ。「2軒目の計画はまだない」と平田さんは語るが、最近、こういった建物をつくりたいという見学者と問い合わせは相次いでいるそうだ。
「先進的な環境活動」として足立区から評価を受け、助成金も下りた。通常のアパート建設の1・5倍のコストがかかってしまったことが難だが、建築資材を再考することで、そこには改善の余地はあるようだ。今後、環境活動がますます重要になり、地域のあり方も問い直されてくることを考えると、こういった建物が増えていく可能性は十分ある。
平田さんは言う。「ほとんどが初めての試みで、不安もたくさんありましたが、環境と人のための、夢でも理想でもない、具体的で持続可能なモデルケースをつくれたような気がします。一時期のブームではなく地に足の着いたひとつの運動として、こういったライフスタイルのあり方を広げていきたいんです」
(山辺健史)
Photos:浅野カズヤ
ひらた・ひろゆき
1973年、東京都生まれ。足立グリーンプロジェクト代表。地球環境パートナーシッププラザ勤務。立教大学大学院21世紀社会デザイン学科在学中。95年カリフォルニア州ハンボルト大学留学中、野外教育NPO・LEAPに激流下りガイドスタッフとして所属。帰国後、巨樹と川と人のつながりを訪ねる日本縦断の旅をきっかけに、環境問題への関心を高め、「足元から考える環境問題」をテーマに、足立グリーンプロジェクトを立ち上げる。植物を活用したヒートアイランド対策や、野菜作りのプロセスを通じた環境学習を展開するなど、「遊びと学び」を融合させるプログラムを展開している。