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住宅政策提案書発表シンポジウム「市民が考える住宅政策」大阪編 レポートpart.5
司会:ありがとうございました。続きまして第3章の「ハウジングリスクをもつ人々」についてということで藤田孝典委員からご提案を頂きます。
どうすれば困窮者に住宅が行き渡るのか
藤田:みなさんこんにちは。私埼玉でほっとプラスというNPO法人の代表をしています、藤田と申します。よろしくお願いいたします。パワーポイントというよりはこのせっかく作っていただいた。住宅政策提案書に基づいてお話させて頂きたいと思います。
私が担当するのは第3章です。これまで稲葉さんや平山さんの話の中でもハウジングリスクを抱える人々が住宅から排除されて、その周辺に追いやられている状況なんだ、ということは十分ご承知の通りだと思っています。
私のNPOには年間約300人の方たちが家を失った状態で相談に来られます。これは、家賃滞納であるとか、派遣切りであるとか、そういう形で住居を追われてしまった方たちです。ですので、基本的には、そういった人たちにもう一度住居を取り戻していこうという活動をずっと行っております。
そのほか、障害がある人、高齢の方、刑余者やホームレス状態の方、ネットカフェ難民といわれる方々などたくさんいらっしゃいます。私たちの活動は1点だけ。そういう方たちの「家を貸してもらえないという状況」を何とか改善していこう、地域でやっていこう、という取り組みをしています。
私も10年くらいこの活動をする中で、「ハウジングリスク」のある方たちに対して家を貸そうとする大家さんや不動産屋さんは稀です。リスクを取って家賃を下げてでも貸そうという方たちはなかなか多くないのではないかと言われていますが、どうしたら貸してもらえるのでしょう。
交渉する中で、たとえば、日々の「見守り」をするだけで貸してあげてもいいよだとか、あるいは、生活保護制度を導入するのであれば生活保護を活用する中でそういった人たちにアパートを貸していきましょう、様々な条件をクリアするのであれば貸していきましょう、うちのNPOが一括で借り上げるという形で提供できるのであれば借り上げてもらいたい。
そういった要望もあって、今では40世帯8棟が入れるようなアパートを埼玉県内で8棟借り上げながら支援活動をしています。
ソーシャルワーカー、NPO、不動産屋、大家の連携が必要
第三章を見て頂くとお分かりのとおり、単身世帯の方も増えていますし単身女性も増えていますし、8、9ページには母子世帯あるいは不安定就労層という方たちが「ハウジングリスク」にさらされています。そういう方たちがどこにいるのか、ということ考えると一般の賃貸住宅ではなかなか借りられないので、その周辺に追いやられているという状況があります。
私たちの活動は、この一つ一つをどうしたら改善できるのだろうか、地域で一緒に話し合うということだと思います。私たちのさいたま市では、空き家率が非常に高いということもあって不動産屋、大家さんは家を貸したいんですね。
でも貸せない理由は、家賃滞納であるとか、中で亡くなってしまったらどうしようとか、そういったリスクがあるというところです。これはNPOが間に入ったり、週に1回くらい買い物して、「おっちゃん、大丈夫?」ということで見回りをしたり、あるいは常に事務所出入りしてくれるような利用者さんであれば貸してあげてもいいよ、というようなそういった、NPOあるいはソーシャルワーカーと不動産屋さん、大家さんとの連携というものは今後大きなカギになってくると考えております。
不動産屋さん、大家さんが貸さない理由、貸したくないという理由も少し考えながら、一緒に解決できる道を模索していかないといけない、ということを感じております。
これはおそらく本来は不動産屋さんの役割だと私は思っております。大家さんの不安を解消できるように、不動産屋さんは入居者の間に入っていろいろな支援をしながらお互い合意をしながら進めていくということなんだと思います。
しかし残念ながら、仲介業であるの不動産屋さんはその役割を十分発揮できていないと感じています。どうして苦しい状況にある人が家を借りられないのか、どうしたらそういった人たちが十分な環境で住めるのか、ということ一緒に考えるような、そういった役割の人たちが必要なんだろうということを感じております。
ですので、私たちのところではケースワーカーさん、不動産屋さん、弁護士さんなど、いろいろな人たちと相談しながら、そういった方たちに住居を提供していこう。その後も安心して住んで頂くために様々な制度を活用していこう。そんなことを行っています。
住宅サービスは新しい次元に
ハウジングリスクを抱えている人たちは住宅の問題だけではなく、複合的な課題を抱えております。精神疾患、親族の問題、身元保証人の問題、借金の問題など、単に住居を貸したというだけでは、残念ながら十分ではなく、その周辺の問題を一緒に解決していく必要があります。
ようやく少しづつですけれども、ケアつきの居住であるとか、支援つきの居住というようなかたちでが広がりつつあります。最近だと、シングルマザーに特化したシェアハウスが有名ですね。住まいだけではなく、子育てという課題を抱えている。住まいだけではなく、教育であるとかいろんな複合的な課題を抱える方たちがいますので、そういったさまざまなことを考えながら住まいや住宅サービスも提供していかなくてはいけないという新しい次元に入っているだろうと感じております。
特に私たちが関わっている、ハウジングリスクを抱える人たちについては、住まいというものの意味合いが少し変わってきます。ケアつきであったり、支援つき、あるいはその状況を理解して一緒に代弁して一緒に問題解決していくための住居としての意味合いが少し前面に出てこないと難しいのではないかな、と思っています。
全部をお話しきれませんでしたので、後で、この第三章全般を通して「どういった人たちが家を借りにくい状況にあるのか」再度ご覧いただけたらと思います。私の方からは以上です。どうもありがとうございました。
住宅政策提案書発表シンポジウム「市民が考える住宅政策」大阪編
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