ビッグイシュー・オンライン編集長のイケダハヤトです。211号の読みどころをご紹介です。
インクルーシブ教育の難しさ
最新号の目玉は乙武洋匡さんのインタビュー記事。小学校教師の実体験をもとに描いた小説「だいじょうぶ3組」の映画化にあたって、ご自身の想いを吐露されています。
個人的に特に興味深かったのが、現在教育界で進められているという「インクルーシブ教育」についてのお話。インクルーシブ教育は、日本語に直せば「”包含”教育」。障害のある者もない者も、同一環境でともに学ぶことを推し進める動きです。
「だいじょうぶ3組」は担任が障害者である物語、その続編「ありがとう3組」はクラスに発達障害を持つ生徒がいる物語となっています。乙武さん自身も「インクルーシブ教育」の当事者であるため、このテーマには強い思い入れがあるのでしょう。
そんな「インクルーシブ教育」の課題について、乙武さんは次のように語っています。
たとえば、僕が逆上がりできないのを見て「なにサボってんだ!」と言う人はいないんですね。
でも、忘れ物が減らないとか、じっとしていられないという発達障害は脳機能の問題だから目に見えないし、そもそもコミュニケーションが苦手という特性があるから周囲に伝えることもままならない。
この15年で、僕のような目に見える障害への理解はずいぶん進んだ。今度は、目に見えにくい障害の番かなと思うんです。
ぼく自身、自分の小中学校時代を振り返ってみると、「あいつは発達障害だったんだろうなぁ」と思う友だちが何名かいたりします。
先生にもよく怒られ、友だちからはからかわれ、本人は辛い思いをしていたことでしょう。ぼく自身も「間抜けなやつだなぁ」程度にしか思っておらず、特段の関与をすることもありませんでした。当時のぼくや友だち、教師に「目に見えにくい障害」への理解があれば、接し方は大いに変わっていたことでしょう。
乙武さんが大切にしているのは「みんなちがって、みんないい」というメッセージ。インタビューのなかでは「みんな完璧じゃないけど、それぞれが得意なことを活かし、苦手なことを補って支え合っていけば、豊かな人間関係が気づいていける。それは学校ではなく、社会も同じだと思うんです」と語っています。
ぼくたちはつい、自分の常識から外れた人を疎外したくなるものです。これからの社会、教育においては、「常識はずれ」の人たちをいかに包含し、コミュニティを形成していくかが問われるのでしょう。
その他、「放射線との向き合い方」、女優の鈴木杏さんのインタビュー、「ハーブ&ドロシー」監督インタビューなど、ビッグイシューでしか読めないコンテンツが多数掲載されています。街角で販売者の方を見かけたら、ぜひお買い求めください。