来年6月で任期を終える曾蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官は最後の施政報告で住宅政策の失敗を認め、2003年から凍結していた公共分譲住宅の建設を再開すると発表した。
香港では世界的に株価が下落しても不動産価格は下がらず、住宅難はますます深刻になっている。施政報告によると、月収3万元(約30万円)以下の世帯を対象に公共分譲住宅を2016年から4年間で1万7000戸建設し、1戸当たり150万〜200万元(約1500万〜2000万円)で提供する予定だという。
この政策に対し野党は「遅すぎる、少なすぎる」と批判している。また、不動産市場の価格が一般市民でも購入できる価格に戻ったら建設を中止するという政策に、不信感を募らせている。さらに問題なのは、公共賃貸住宅への入居を希望する単身若年層が急増しているにもかかわらず、毎年1万5000戸建設という現状維持にとどまっていることだ。
この住宅政策は曾行政長官が有終の美を飾るためのパフォーマンスにすぎないのだろうか。
(森若裕子/参照:亜洲週刊、星島日報、中国評論)
(2011年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第181号より)