(2013年5月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 215号より)
1万件の点検漏れ。「もんじゅ」停止命令
「もんじゅ」は1万件におよぶ点検漏れで、原子力規制委員会から停止命令が出された。これによって運転再開へ向けた燃料交換などの準備作業ができなくなり、日本原子力研究開発機構(以下、機構)が予定していた10月からの試験運転の再開はできなくなった。
「もんじゅ」での点検漏れはこれまでもたびたび報道された。機構が原子力規制委員会に提出した報告書によれば、2010年以降、電気・計測制御設備などの点検漏れが9847件もあった。この中には安全上重要な機器類が55も含まれていた。
発端は昨年9月頃、ナトリウム漏れ検出器の点検計画変更で「手続きの不備」がわかり、同様の事例がないか調査したところ判明した。何のことはない、期限がきても必要な点検を先送りしていたわけだ。
「もんじゅ」が停止しているので試験運転再開前に点検を終わらせればよいと考えたからだろうが、そうだとしても、点検が先送り可能だとする安全評価と相応の手続きが必要だった。根本原因として安全文化の欠如を掲げたのは、今回で7回目。トラブルが起きるたびにこれを繰り返している。規制委員会では「こんな組織の存在を許していることが問題」と厳しい意見も出た。
「もんじゅ」は試験運転中の95年にナトリウム漏えい火災事故を起こし、生々しい現場映像を隠蔽したことで社会的な指弾を受け、以来15年にわたって停止していた。その間、名古屋高裁が安全審査に不備があったとして、「もんじゅ」の許可処分を取り消す判決を言い渡したこともあった。
10年5月に出力0パーセントでの試験運転に成功したが、8月には燃料交換のための炉内中継装置を原子炉内に落下させ、また、非常用のディーゼル発電機のシリンダーに亀裂が見つかるなどのトラブルが相次ぎ、再び停止状態に入った。
福島原発事故を受けて研究炉に対する規制が強化されたので、これに適合しないと再開はない。さらに、規制委員会による敷地内の断層の再調査が今後予定されている。原子炉は地表まで達している断層の上にあり、機構は破砕帯としているが、活断層となると「もんじゅ」は廃炉となる。
こんな「もんじゅ」が動くとすれば危なくて仕方ない。廃炉とすべきだ。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)