こんにちは。ビッグイシューオンラインの小林美穂子です。

梅雨だというのに夏真っ盛りのようなお天気が続いておりますが、皆さん、体調管理にご苦労されているのではないでしょうか。

さて、暗いニュースばかりで世界が覆われて、将来に対する希望や人を信頼する勇気がついえてしまいそうな昨今、心温まるニュースを見つけました。二人の幸せのおすそ分けをあなたにも…。

その婚約のニュースが新聞の見出しとなり世界を駆けめぐったビッグイシューの販売者ジャックとその妻トニが、2016年3月、互いの故郷であるブリストルで結婚式を挙げた。

二人の愛の物語に触発された地域の人々は、二人の結婚式を生涯忘れられない特別な一日にしようと集結した。

二人が出会ったのは2013年。当時まだ路上生活をしていたジャックが、公共料金を払えずに困っていたトニになけなしの金を貸したのがはじまり。ジャックとトニの婚約は、BBC、ガーディアン誌、コスモポリタン、そして遠くオーストラリアのウィメンズウィークリーで紹介された。
記事:アンドリュー・バーンズ(The Big Issue UK)

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お金をねだったのに、逆に渡す羽目に。不運な二人のなれそめ。

真珠の飾りつけがほどこされたロマンチックなドレスを身に着け、ヴェールをたなびかせて新婦はきらきらと輝いていた。長い髪をきっちりと編み込んで、スマートなデザイナーズブランドのスーツに身を包んだ新郎は、歓喜のあまり胸が破裂してしまいそうに見えた。

そして、ブリストルの緑豊かなクリフトン区の聖ポール教会で、トニ・オズボーンがビッグイシュー販売者のジャック・リチャードソンに永遠の愛を誓った時、集まった人々の目から喜びの涙があふれた。喜びの涙は教会だけに留まらず、イギリス全土に広がり、海を越えた。

不運に打ち勝ったトニとジャックの愛の物語は世界中に伝えられることとなった。 ジャックは37歳。 路上生活をしていた2013年はじめ、47歳だったトニにお金をねだった。すると、トニは突然泣き出し、自分は電気料金を払うお金にも困っているのだと告白したのだった。心根の優しいジャックは、思わずなけなしの50ポンドを彼女に渡した。

そんな出来事から少しして、安定した生活と将来設計のために収入を得なくてはと思い立ったジャックはビッグイシューの販売を始めた。トニはジャックから雑誌を購入するようになった。そして2015年、トニは自分の家に来ないかと申し出て、二人の恋が花開いた。 ジャックが自分の販売場所で片膝立ちになり、大勢の顧客が見守る中トニにプロポーズをし、結婚式の日取りを決めると、オーストラリアのウィメンズウィークリーから、インドの新聞ザ・ヒンドゥ、アメリカのテレビニュースまで、世界のメディアが二人に注目をした。 不運の中にいた二人が、お互いを助け合いながら愛を育んだ末のハッピーエンディングに、心を動かされない人がいようか。

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「自分が地球上で一番ラッキーな男に思えるよ」地域市民がこぞって二人の結婚を祝う

2016年3月19日、二人の物語に感動した家族や友人、そしてまるっきりの他人まで100人以上の有志が、仲睦まじい二人の特別な日を形作る一員として教会に集まった。そしてその人々の面前で、ジャックとトニは結婚誓約書にサインをしたのであった。二人はこの幸せな儀式を共有したいと思うすべての人々を受け入れ、教会からすぐ近くのバンディ・バーで行われる披露宴にも招待した。バーには知らない人たちが電話をかけてきて、幸せな二人への祝儀を店に預けておきたいという申し出るという出来事もあった。

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式が終わり、感極まってはしゃぐ二人が教会から出てくると、教会の外で幸せな二人の姿を撮ろうと待ち構えていたカメラマンやテレビカメラを手にした報道陣が押し合いになりながら二人を撮影した。二人の結婚は、ネバダ州リノのラジオで放送され、南アフリカの雑誌You Magazine、テレグラフ紙やデイリーメール、メトロやコスモポリタンなどに掲載されたのである。

「たくさんの人たちが僕たちのなれ初めと結婚に励まされたって言ってくれたのが嬉しかったよ。僕たちの結婚のために力を尽くしてくれたみんなにどんなに感謝してもしきれない。自分が地球上で一番ラッキーな男に思えるよ」 結婚式後、持ち場のパークストリートでのビッグイシュー販売を二日休んだジャックは、満面の笑みで答えた。

「結婚式では感極まってしまって、ちょっと泣いてしまいました。これだけたくさんの人たちに喜んでもらえたなんて、本当に素晴らしいです」上品なウェディングドレスに身を包み、まばゆいほどに輝きながら、笑顔のトニが付け加えた。

ジャックがトニに捧げたいとずっと夢見ていたおとぎ話のような結婚式を現実にしてくれたブリストルの企業や個人に、二人は心から感謝を述べた。地元のお菓子屋はドクター・フーとㇾゴを組み合わせたウェディングケーキを作成し(ジャックは、SFドラマ ドクター・フーの大ファンであり、トニはㇾゴブロックが大好き)、その他にも、ワイン商、美容院、写真家、映像作家などがこの特別な日を演出した。牧師のダンは、ジャックと炊き出し(慈善団体やNPOが生活困窮者に対して行う無料の配食サービス)を通して出会い、友人となった。そして、自分が式を執り行うことを申し出たのだった。式では地元のアカペラ聖歌隊ザ・クリフトン・シンガーズが讃美歌を三曲歌ってくれた。

これまでは未来が見えませんでした。でも、今、愛する人がいて、私を愛してくれる人がいる。未来に目を向けることができます。

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「最初私たちはできるだけ安く済むように、役所に届けを出すだけにしようと思っていました。それが想像もできなかったような、まるでおとぎ話のような結婚式になった。まるで、彼女の価値に値する素敵な結婚式を与えてあげようと、天と地がひっくり返って助けてくれたみたいです」

現在、雑誌「ビッグイシュー」を売って生計を立てながら、オープンカレッジで社会科学の単位取得にも励むジャックは言う。「僕たちが出会った時、僕は駐車場で寝起きしていましたが彼女はそんなことは気にしなかった。彼女は人として僕に向き合ってくれました。本当に素晴らしい人です」

一方でトニは、「彼には尊厳がありました。そのことに本当に衝撃を受けました。とても驚いてしまって、思わず私は彼をハグしました。その次に彼に偶然会った時、彼はビッグイシューの販売者バッヂを付けていました。それから私はたびたび彼に会いにいくようになり、会えば会うほどに彼を好きになっていきました。それまでの私は一人で混乱していました。だけど彼と出会ったおかげで、見える景色が何もかも完全に変わったのです。

これまでは未来がまったく見えませんでした。でも、今、パートナーとして愛する人がいて、彼も私を愛してくれる。未来に目を向けることができるようになりました。

http://www.bigissue.com/features/5953/bristol-big-issue-vendor-jack-marries-woman-he-met-while-sleeping-rough
ジャックとトニの結婚式の模様を伝えるビッグイシューウェブサイト

INSP.ngoのご厚意による/The Big Issue UK bigissue.com @BigIssue





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